患者会の活用法
現在、患者会の会員数はどのくらいですか。
鍋田さん:
腎移植者が約70人、家族会員が約30人です。
どのような活動をされていますか。
鍋田さん:
総会、講演会、研修会、1日バス旅行、お花見など、いろいろな活動をしています。その中で、会員同士が話す時間もたくさんあります。各イベントでの内容は会報にして会員にお配りしています。
患者会の活動の様子
患者会に参加することは、どのようなメリットがあると思いますか。
尾山さん:
会を通じて、いろいろな人と知り合いになれるのは良いと思います。
腎移植者や透析患者など、いろいろな背景をお持ちの方が参加されていますので、皆さんとの情報交換はとても参考になります。
鍋田さん:
尾山さんや私は移植歴が長いですが、我々でも会の皆さんとお話ししていると、今でも新しく知ることがたくさんあります。特に手術後間もない方にとっては、他の方のお話はとても参考になると思います。どういう薬を飲んでいるか、どんな食事をしているか、運動はいつ頃からどれくらいしていいのか、合併症の経験はあるかなど。もちろん先生にも質問できると思いますが、実体験を直接聞くことで、とても参考になるのです。
杉本レシピエント移植コーディネーター:
まだ当院の移植患者さんが少なかったころは、移植後のフォローアップ外来の時間が限定されていましたので、外来で移植患者さん同士が会話できる環境がありましたが、現在は患者さんも増え、外来も毎日ありますので、どの患者さんが移植者なのかは分かりにくくなりました。そのため、移植者同士の交流という意味でも、患者会を利用されるのは良いと思います。移植された方が退院される際には患者会のご案内をしています。
今後、患者会ではどのような活動をしていきたいですか。
鍋田さん:
今後も移植に関する啓発活動を続けていきたいです。私たちが元気なところを見ていただいて、多くの人に腎移植を知っていただきたいですね。また、会員も増やしていきたいです。
尾山さん:
今はインターネットなど、いろいろな情報入手手段がありますが、経験者から直接話が聞けることは大変有用だと思います。
私が透析を7年間していて、移植して元気になったということもあり、私のところに移植についての相談に来られる方も多いです。
先生方は、患者会に参加するメリットはどのようなところにあると思われますか。
日髙先生:
患者さんから直接実体験を聞く機会が持てるのは、とても良いと思います。生体腎移植を予定されている患者さんの中には、ドナーのことを心配されている方が多いので、実際に腎提供されたドナーの方から話を聞くことによって、安心される方もいらっしゃいます。今後、移植前の方が、患者会の方とよりコミュニケーションを取れるようにしていきたいですね。
また、熊本地震の際には患者会で安否確認をされたり、その後、災害時の対応をまとめた冊子を作られたりしているので、会に参加していることで安心感も持てると思います。
上木原先生:
先ほどお話ししたように、私たちは市民公開講座や講演会などで移植についてお話しすることはありますが、そこに来られた方にしか情報は届きませんので、そのような場に来られない方が、実体験をお持ちの方と接する機会が多ければ多いほど、移植についての情報は広がると思います。
豊田先生:
術前の問診をしていると、多くの患者さんは直前まで不安だということを感じます。そのようなときに、移植者の方が実体験を直接語っていただけると、とてもありがたいです。私たちが移植者の方に個人的にお願いして機会を作ってもらうことはありますが、患者会の集まりがあるタイミングでは、そこに来ていただいて、話を聞いてもらうようにしています。
また先ほど日髙先生もおっしゃったように、地震などの緊急時には、病院の電話回線はパンクし、スタッフも対応に追われます。病院と患者会でやり取りして、患者会から患者さんへ情報を伝えてもらうと混乱が避けられると思います。
患者会では皆さんからどのような質問を受けることが多いですか。
鍋田さん:
服薬や食事、合併症などの質問が多いですが、お金に関する質問も多いですね。障害年金は何年で支給停止されてしまうのかなど、実例を知りたいという方が多いです。
杉本コーディネーター:
患者さんが退院される際には、障害年金は腎機能が安定すると支給が停止される、というお話はしておりますが、実際はどうなのかが知りたいのだと思います。
患者会として、移植を検討している方々にお伝えしたいことはありますか。
鍋田さん:
移植後の経過は人それぞれですが、患者会にはいろいろな方がいらっしゃるので、そのような方たちと移植前から交流をもつことで、移植に対する見方が変わると思います。移植しても、どのくらい腎臓がもつか分からないから移植をしない、ということではなく、移植腎が機能している間の生活を充実させよう、というような考え方ができるようになれば、移植される方も増えるのではないかと思います。
尾山さん:
移植腎が機能する期間が、仮に5年でも10年でも、一定期間はとても良い期間があるので、患者会でいろいろな人の話を聞いて、移植をするかどうかを決めていただく方法もあると思います。