2人の宝物に恵まれて

移植をしてから一番良かったこと、嬉しかったことは何ですか。

清水さん
一番は、やはり子どもができたことです。移植して2年が過ぎたころ妊娠しましたが、医師から、「薬を飲んでいることで、赤ちゃんに何かしらの影響は出るかもしれない」、というリスクの話もされました。赤ちゃんは、低出生体重児でしたが、すごく元気に育っています。そして約1カ月前、2人目も無事に出産しました。

第1子誕生 第2子誕生

先生、妊娠を希望される患者さんには、薬はどのように変更されるのでしょうか。

力石先生
だいたいどこの病院でも同じだと思いますが、一部の免疫抑制剤を変更します。タイミングとしては、妊娠を計画する時点から始めます。産後、移植者は授乳をしません。次の妊娠の可能性がない場合には薬を元に戻します。

移植された女性で、お子さんが産まれる確率はどのくらいなのでしょうか。

力石先生
挙児希望のある方で、それが実現する方はけっこう多いです。婦人科系に問題がなく、出産可能な年齢であり、ご主人にも問題がなければ、一般の方の確率とそんなに変わらないと思います。

移植してから妊娠するまでに、空けた方がいい期間というのはありますか。

力石先生
いろいろな基準がありますが、移植後1年以上たって、腎機能が安定している、クレアチニン値が1.5㎎/dl未満、蛋白尿が出ていない、血圧が安定しているという条件を満たしていれば、普通は問題ありません。そろそろ妊娠の準備をしても大丈夫であるということは、挙児を希望されている患者さんにはお伝えしています。

出産に際して、移植者として特別に注意したことや、大変だったことはどのようなことですか。

清水さん
一番注意した点は、食事です。普段よりも薄味にし、水分も多めに取っていました。
1人目の時は仕事をしていましたが、早めに(妊娠5カ月に入ってすぐに)産休をいただきました。産科と泌尿器科の外来にまめに通い(2週間に1度)、毎日朝と晩に血圧を測っていました。また、疲れを残さないように、早めに寝ていました。

力石先生、移植を受けている妊婦さんが、普通の人以上に気をつける点はありますか。

力石先生

力石先生
特にはないと思います。血圧や蛋白尿、あるいは定期的に病院を受診するというようなことについては、普通の人よりも少しナーバスになっているかもしれませんが、恐らく産科の方でも特別扱いはあまりされていないはずです。ただやはり、普通の人よりはリスクが多いので、産科の先生たちは少し気を付けてはいますね。

出産はやはり大変でしたでしょうか。

清水さん
1人目の時は、妊娠高血圧症の症状が早くから出てしまっていて、30週で産むことになりました。妊娠後半は栄養が赤ちゃんに行かず、全然大きくなりませんでした。その時は、私のクレアチニン値(出産時で1.76㎎/dl)と血小板の値が、血液検査で良くなかったのですが、赤ちゃんはすごく元気でしたので、「もう産んだ方がいい、今日産みましょう。産んでしまって、外で栄養をあげた方がいい。」と言われました。
佐々木先生からも、小さく生まれる可能性もあるし、薬の影響で多指症の可能性もなくはないと事前に言われていたので、それについては覚悟していたのですが、あまりに急でびっくりしてしまって、大泣きしてしまいました。生まれた後は、とても小さかったのですが、すぐに泣いてくれたので、とりあえず元気だなと思い、また大泣きしてしまいましたね(笑)。
2人目は33週で産みましたが、1人目の時とは全然違いました。1人目の時は25週くらいでクレアチニンの値や血圧が上がってきたのですが、2人目の時は25週を超えてもまったく変動がなく、血小板が減ることもありませんでした。尿蛋白も1人目の時はプラス4まで行ったのですが、2人目の時はマイナスのままで産むことができました。

出産後は、授乳はしないと思いますが、それ以外で普通の妊婦さんと比べて違うことはありますか。

清水さん
恐らく無いと思います。ただ、授乳については、私は2人目の時に初乳を1~2滴(1~2ccくらい)だけはあげました。1人目の時には何があるかわからないので止めたのですが、ずっとあげたいという願望があったので、2人目の時は、手術前に先生に確認しました。「持続的にはやめた方がいいけれど、最初の1~2ccくらいなら大丈夫」ということだったので、薬剤師さん、産科の先生、泌尿器科の先生にも許可をいただき、少しだけ授乳をしました。注射器のようなもので吸って、赤ちゃんにはチューブのようなものを通してあげました。

母親になって変わったことはありますか。

清水さん
自分ではあまり変わっていないと思いますが、周りからは子どもを産んだ後の方が元気になったと言われます。守るべきものがあるからでしょうか。母から腎臓をもらわなければ、子どももいなかったと思うので、母もとても喜んでくれています。