打田先生:
杉山さんは、すでに息子さんが生体腎移植手術を経験していましたので、ご自身の移植手術は安心して受ける事が出来たのではないでしょうか?
杉山さん:
手術に際しての不安は全くありませんでした。我が家は打田先生のお陰で、腎移植手術に関して、家族全員がとても安心感を持っています。
主人と息子、私達の手術の結果を見て、移植手術を受けようと決めた方もいらっしゃいます。
以前、移植手術を受ける事が不安な方に対し、先生が、「杉山さんの息子さんに会ってみてください」とお話された事がありました。実際に息子がその方のご自宅に訪問した際、息子が玄関を開けて顔を見せただけで、「もう心配は無くなりました」と言って頂けました(笑)。
私達が『元気な姿を見せる』ということは非常に大事だと思っています。移植手術に不安を感じていらっしゃる方も、私達家族の姿をお見せすると、皆さんとても安心されます。
移植手術を終えた時はどんなお気持ちでしたか?
杉山さん:
先生とスタッフの方々への「感謝」の一言でした。妹と対面した時には、感無量で、ずっと抱き合っていました。
打田先生:
杉山さんは移植手術後3週間で退院されましたね。仕事はいつから開始したのですか?
杉山さん:
私は移植手術後3週間で退院し、すぐに商工会の理事会に参加しました。「ただいま!」と言って理事会に参加したら、皆が「うそでしょ!3週間で帰ってきた!」とびっくりしていました。
息子のドナーとして手術を受けた主人は、退院して1週間後に少年野球の監督をしに出掛けていました。
打田先生:
現在は移植手術を受けた患者さんには、「基本的には退院後1週間経ったら働いていいです」とお話しています。肉体労働を伴う方には、「2週間経ったら働いていいですよ」とお話しています。
杉山さん:
病院でも手術後、「すぐに動いてください」と言われましたので、出来る限り病院の廊下を歩くようにしていました。
その後は移植に関しての啓発活動もしていらっしゃるとの事ですが、どの様なお話をして いらっしゃるのですか?
杉山さん:
「移植は本当にいいですよ」という話を色々な方にお話しています。
手術を受ける事を心配されている方がいらっしゃれば、私の自宅に来て頂き、息子と妹と私でお会いしたりしています。「心配する事ないですよ」とお話すると、時に、泣いてしまう方もいらっしゃいますが、「何も心配する事はないし、泣くのではなく、むしろ提供してくれる方がいるという事を喜んでください」とお話しています。
また、夫婦間移植のケースで、「相手が自分に提供してくれるのか」と悩む方もいらっしゃるのですが、その様な方にも、「愛の天秤の重さが一緒になったら、自然と移植の話が進むものですよ。だから、まずは自分から相手に愛情を与える事が大事ですよ」とお話しています。今は、夫婦間で血液型が違っても移植手術が行えますからね。
打田先生:
現在では、腎移植手術は、身構える必要が無い、普通の治療になりました。
今から30年以上前に移植手術を行った時には、手術後、何も問題がない場合も半年くらい入院して頂いていましたからね。
現在は手術後、約2~3週間で退院出来るようになりましたし、杉山さんのようにすぐに仕事を再開する方もいらっしゃいます。
杉山さん:
「腎臓が1つの家族」として腎移植が身近で普通の治療であるという話をもっと広めていきたいと思っています。私も息子が手術を受ける前は、「腎移植なんて、自分には縁遠い世界、違う世界の話だ」と思っていました。
移植後、私自身はせっかく頂いた命なのだから、出来る事は何でもやろうとチャレンジしていますし、息子のドナーである夫も、仕事の他にも土日はボランティアで少年野球を教えています。
息子も、移植後、「今までは国に補助をしてもらう方だったので、今度は支える方の人間になりたい」と言って、今年1月、自ら会社を立ち上げました。