腎太郎ちゃんとの出会い

手術後の経過は順調でしたか?

松井さん
術後1ヶ月くらいはおしっこが出ず、拒絶反応などもあり少し大変でした。でもその2ヵ月間の入院が私にとってはとても大事な期間でした。
ちょうど術後1週間か2週間位の拒絶反応があり大変だった時期に、私が透析導入する際に色々お世話になった看護師さんに会いたいなと思っていたところ、その日にその看護師さんがお見舞いに来てくれました。
看護師さんとお話をしていると、看護師さんが「腎臓に名前をつけたら仲良くなれるかもしれないよ」と言ってくれ、看護師さんと一緒に新たに頂いた腎臓に『腎太郎ちゃん』という名前を付けました。その時から腎太郎ちゃんと一緒に頑張って生きているという気持ちになれました。
私が不安でいると、それが腎太郎ちゃんに負担となってしまうと思い、「とにかく腎太郎ちゃんを信じているし、前向きな気持ちでいなければ」と考えるようになりました。

先生や看護師さんにもそのお話をされたのですか?

松井さん
初めて先生に、頂いた腎臓に名前を付けた話をした時にはどう思われるか心配だったのですが、先生も「いいと思うよ」と言ってくださり、その後病院の皆が『腎太郎ちゃん』と呼んでくれるようになりました。
原田先生や看護師さんがいつでも明るくニコニコ笑顔で診察をしに来てくださり、本当にありがたかったです。

その後は順調に回復されたのですか?

松井さん
その後は腎太郎ちゃんが頑張ってくれ、無事におしっこが出ました。おしっこが出た時は嬉しくて涙が出ました。
本当に元気に大切に生きていこうと思いました。

支えてくれた人々への心からの感謝

移植後、ドナーのご家族にお手紙を書いていらっしゃるそうですね。

松井さん
はい。ずっと書き続けられるように、元気でいたいと思っています。

移植をして一番良かった事、嬉しかった事はどんな事ですか?

松井さん
毎日おしっこが出ることと、腎太郎ちゃんと一緒に健康で生きていられることが本当に嬉しいです。
あとは、元気に働くことが出来、旅行にも行けるようになった事です。透析の時は長期の旅行などは難しかったので、沖縄に行ってダイビングや乗馬ができた時には本当に感動しました。まずは国内の色々な場所にこれからどんどん出かけて行こうと思っています。

松井さんは現在、医療事務の仕事をされているとの事ですが、医療事務の仕事はいつから始めたのですか?

松井さん
以前働いていた職場はちょうど移植をする1ヶ月前くらいに辞め、退職後は適度な運動もして健康的な生活をし、透析をしていた頃の中で一番元気でした。本当に幸せな事に元気な自分で移植手術を迎える事が出来ました。
移植後、腎太郎ちゃんと新たなスタートを切ろうと思っていた時に、「先生や看護師さんに助けられ元気をもらい今の私があるのだ」と思い、「私も病院で働きたい」と考えるようになりました。何か少しでも患者さんの助けになれればと思い医療事務の資格を取り、医療事務として働き始める事が出来ました。