普通に過ごせる喜び
2回目の移植後、嬉しかったこと、良かったことはどの様なことですか。
松本さん:
主人が、私が元気になったことを一番喜んでくれたことです。また、毎日普通に家事が出来るようになり、主人に負担をかけることが無くなったことです。
移植後、ご主人に対しては何か特別なイベント等を行っていますか。
松本さん:
以前のように、きちんとバランスの取れた食事を作ったり、年に1回旅行に行ったりすることくらいで、特別なことはしていないですね。
移植後の日常生活では特にどの様なことに気を付けて生活していますか。
松本さん:
水分をしっかり取ること、服薬時間を守ること、バランスの良い食事を取り、塩分を控えることなどに気を付けています。あとは体重を増やさないことと軽い運動をすることですが、その2つはなかなか難しいですね(笑)。
運動といえば、松本さんは移植者スポーツ大会にも何度か参加されているのですね。
松本さん:
移植者スポーツ大会には1度目の移植の後も、2度目の移植の後も、開催場所が近い場合には参加しています。2001年に神戸で開催された世界移植者スポーツ大会に参加した際には、ローンボウルズ競技ペアで銀メダルを取りました。
移植後の今後の夢はありますか。
松本さん:
今後は夫婦2人が健康で普通に暮らしていければそれで充分だと思っています。
メッセージ
最後にこれから移植を受ける方、移植を検討している方へメッセージをお願いします。
松本さん:
医療の進歩は目覚ましいと感じています。私も1回目の移植の時は夫婦間移植が出来るようになるとは思いませんでした。まずは先生や移植を経験された方々の話を聞いて欲しいと思います。そして希望を持って前向きに頑張って欲しいと思います。
ご主人:
移植に関しては不安を持たなくていいという事をお伝えしたいですね。もちろん多少なりとも不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、恐れずに先生の言うことをしっかりと聞いて必要な対応をしていれば問題ないと思います。
西村先生:
腎移植は非常に良い治療で、松本さんのように非常にうまくいっているケースが多いです。県立西宮病院の成績としては全国平均とほぼ同等で、最近の10年生着率は8割を超えています。透析で辛い思いをしている方は移植をすることによって透析前の身体に戻る人がほとんどですので、期待して移植手術を受けて頂きたいのですが、やはりすべての方がうまくいくわけではありません。移植腎が10~20年もつ人もいれば、5年以内で透析に戻ってしまう人もいます。その様なことも分かった上で手術を受けて頂きたいと思います。
岸川先生:
移植医療はすごく普通の医療となってきていることをまだご存知ない方もいらっしゃいます。日本の移植件数は昨年でも年間1600件程度です。それに比べて全国の透析患者は30万人を超えており、非常にバランスが悪い状況です。移植医療の現実をご存じない方にはまずは良く知ってもらいたいと思います。
米本先生(腎臓内科):
腎臓内科の視点でお話させて頂くと、様々なケースを知ることが大事なのではないかと思います。移植医療の良いところと、透析医療の良いところ、また、移植でうまく行っている人の話と、透析でうまく行っている人の話、それぞれの治療に関する話をよく聞いて、ご本人にとって一番適している治療は何なのかを判断して頂きたいと思います。
山下レシピエント移植コーディネーター:
私が移植の相談に来られた患者さんによくお話しするのは、ただ透析をしたくないから移植をするということではなく、透析を離脱した先に何を目指すのかという事を考えて欲しいということです。例えば、透析を離脱したら仕事を頑張りたい、海外旅行をしたい、というように、5年後、10年後の目標を立てて欲しいという事を話しています。何をやりたいのかというのを明確にしておくことが、移植期間を大事にし、充実させることに繋がると思います。