移植後の充実した生活
移植後、新たに始めたことや、今後の夢はありますか。
岩松さん:
特に新たに始めたことではありませんが、運動のためにプールへ行って泳いだり、水中歩行をしたり、透析前に作っていた野菜畑で、キュウリ、トマト、ナス、オクラ、その他の野菜などを作り、収穫をしています。移植後は、四国内の温泉や、近くの八十八箇所の霊場などに、運動のために歩きに行っています。今後は、妻と一緒に国内や海外へも旅行をしたいと思っています。
先生、通常は、移植後どのくらいたてば、海外旅行に行ってもよいのでしょうか。
渋谷先生:
検査数値にもよりますが、一般的には半年後くらいからです。
移植後は、周りのご友人などからも、「元気になったね」と言われることが多いですか。
岩松さん:
そうですね。透析を受けていた時には、皆、私に気を使っていたのか、誰も誘ってくれませんでしたが、最近は、友人や同級生など、いろいろな人から呼んでもらえるようになり、とてもうれしいです。透析を受けていた当時の看護師さんなどにお礼に行った時には、本当に良かったねと喜んでいただきました。
メッセージ
渋谷先生にお伝えしたいことはありますか。
岩松さん:
私たちは高齢のドナーとレシピエントで、年齢的なハードルが高いにも関わらず、渋谷先生に検査をしていただき、最終的に移植もしていただきました。先生には心から感謝しています。また、今の医療の進歩にも驚くばかりです。これからも渋谷先生には、一生面倒を見ていただきたいと思っております。私も努力をしますので、よろしくお願い致します。
奥様への思いを教えてください。
岩松さん:
私が入院をしている時に、妻が腎移植の講演会に出席して話を聞き、「私の腎臓が使えるのであれば、あげるから、調べてもらいましょう」と言ってくれました。なんという優しさだろうと、感激しました。この気持をありがたく思い、一生、妻の面倒を見ていこうと思っています。妻には命をもらいましたからね。
現在、移植手術を控えている、または移植手術を検討しているレシピエントやドナーの方へメッセージをお願いします。
岩松さん:
私たちは、腎移植に関する講演会に何回か参加し、拝聴するうちに、移植手術や移植に関連する知識を得ることができました。末期腎不全で、透析導入を控えている方や、現在透析を受けている方は、ぜひ講演会に参加されたり、先生のお話を聞いたりして、まずは移植医療のことを知り、そこから移植手術を検討されると良いと思います。講演会には、ドナーになっていただける可能性のある方と一緒に参加されますと、なおいいと思います。
河野コーディネーターからも、メッセージをお願いします。
河野レシピエント移植コーディネーター:
生体腎移植については、「夫婦間でできるとは思っていなかった」とか、「兄弟でないと臓器提供できないと思っていた」とおっしゃる方が、たまにいらっしゃいます。また、高齢でも移植可能な場合があることや、血液型が違っても移植できることを知らず、「腎移植は自分には関係のない医療だ」と思っている方もいらっしゃると思います。ご夫婦ともに70代半ばで、血液型が異なるご夫婦間で移植をされた岩松さんのお話は、特に高齢で、腎不全に苦しんでいらっしゃる方に希望を持っていただけるものだと思います。ただ、同時に、岩松さんが普段からきちんと自己管理をしていらっしゃり、それがあるからこそ、現在のお元気で充実された生活があるということも、知っていただきたいと思います。
最後に、先生からもメッセージをお願いします。
渋谷先生:
透析導入になる時点で、移植ができるということを知らない方が、あまりにも多い印象があります。65歳以上で透析導入になると、そこから献腎移植希望の登録をし、移植の機会を得られるというのは、なかなか難しいのが現状です。ですから、夫婦間移植が可能だということや、血液型が違っていても移植ができるということを知っていただき、まずは一度、ご相談いただければと思います。
また、生体腎移植の場合は、ドナーもレシピエントも二人がともに元気に生活していくことが一番の目標であり、それが最も大事なことです。お二人が元気でないと成功ではないですから、移植後も、ドナーとレシピエントがお互いの健康を気遣いあってほしいと思います。