多くの患者さんのために
移植後、新たに始めた事や、今後の夢はありますか。
浜頭さん:
腹膜透析の患者会「すずらんの会」を、新たに慢性腎臓病患者会「とかち・すずらんの会」として移植後に立ち上げ、活動しています。会員は、保存期の患者さんや透析患者さん、腎移植者の方、ご家族、医療関係者などです。
地域ぐるみで病気の予防や治療選択の正しい情報発信、QOL(生活の質)の向上に取り組んでいきたいと思い、活動しています。自分自身が、腎臓病が怖いということも知らなかったですし、妊娠中にたんぱくが出ても、「何?」という感じで、ましてや腎臓病の治療で移植があるなんて全く知りませんでしたので、そのようなことについて日々仲間と勉強をしています。
いずれは仲間と透析患者さんや移植者の方々の就労の場、憩いの場が実現できたらいいな、と思っています。透析が長くなると、職場に居づらくなり、辞めなくてはならないことも多く、そのような人達のための場所もできたらと考えています。先日も、勉強会の時に出しているお弁当の会社に、ある透析患者さんを紹介したところ、その方は今、本当に生き生きと仕事をしています。障害年金を切られるのが嫌で移植を避けている透析患者さんもいるので、今後もこのような活動をぜひ続けたいと思っています。そのためにも、社会福祉士の資格取得のための勉強を始めました。資格が取れるまで何年かかるかわかりませんが、頑張ろうと思っています。
三浦先生:
浜頭さんは、地元で移植医療の啓発活動に積極的に取り組まれていて、「とかち・すずらんの会」では“ ボス”と呼ばれているそうです(笑)。
確かに浜頭さんにはその風格が漂っていますね(笑)。浜頭さんにとって三浦先生はどのような先生ですか。
浜頭さん:
もしも、三浦先生に出会えていなかったら、私は今も透析をしているか、死んでいたと思っています。とにかく感謝の気持ちで一杯です。「ありがとうございます」の言葉を何百回、何千回言っても言い足りないくらいです。いつも患者さんの事を大事に思ってくださり、診察の時は話しやすく、丁寧に説明してくださいます。三浦先生が主治医で本当に良かったです。
これからもたくさんの患者さんを私のように元気にしてあげて欲しいです。信頼できる先生に手術をしていただくことができ、とても幸せです。
三浦先生:
もちろん、これからも頑張りますが、患者さんには、できれば透析を長く続けて動脈硬化が進んでしまう前に、できるだけ早く診察に来て欲しいですね。
浜頭さん:
透析を10年以上受けている方でも、移植の話をすると、「移植はまだ早いと言われているから」とおっしゃる方もいて、北海道での腎臓病の正しい知識がもっと広まる必要性を感じています。
感謝とメッセージ
ドナーである弟さんへの思いを教えてください。
浜頭さん:
幼いころの弟は、好き嫌いが多くて風邪もよく引く上に、病弱で入院することも多く、近所のガキ大将によく泣かされていました。その度に私は、弟を泣かすガキ大将を竹箒を持って追いかけ、倍返しをしてやっていました。
他の家の子に弟が泣かされるのは絶対許さなかった一方で、家では自分が弟のことを結構泣かせていたのですが、大人になって、まさかその弟から腎臓をもらい、助けてもらうことになるとは夢にも思いませんでした。弟の幼いころからの事やドナーになると決めてくれた時の思いを考えると今でも胸が一杯になります。普段から家族思いの優しい弟です。本当に心から感謝しています。
最後に、現在、移植を検討している方や移植を待っている方にメッセージをお願いします。
浜頭さん:
まずは透析導入前に家族で一度、移植施設で専門医師のお話を聞いて欲しいと思います。そしてもし、ドナーになってくれる家族がいるのであれば、迷わず移植をして欲しいです。
ドナーがいない場合は、すぐに献腎登録をしてください。それから、ぜひ移植の講演会などに参加して情報をキャッチして欲しいと思います。
私は移植してから3年が過ぎました。今まで多くの人に助けられてきました。病気になったことでいろいろな事を経験してきました。患者会の活動から患者さん一人一人にドラマがあるのだと感じています。同じ病気の患者さんに治療選択の情報は平等であるべきだと思っています。お節介おばさんは、これからもまだまだやる事が一杯です。
三浦先生:
最終的に移植できるかどうかは別としても、たとえ移植手術が難しそうな患者さんであっても、どうやったら移植ができるか、患者さんと一緒に問題を一つ一つ解決していきたいと思っていますので、まずは、診察に来ていただければと思います。