移植を希望される方へ
先生、移植希望の方の初診ではどのようなお話をされるのですか。
力石先生:
最初にコーディネーターがお話を聞き、移植の概要を説明して、その後医師の診察となります。一般外来とは別の専門外来を作っており、1時間~1時間半をかけてお話しています。患者さんからの質問にも答えます。診察が終了後、再度コーディネーターがお話をしています。
患者さんによっても違うと思いますが、移植までの期間はだいたいどのくらいなのでしょうか。
力石先生:
通常は6カ月以上かかっていると思います。レシピエントの方は腎移植手術を安全に受けられるかどうかを確認する手術が必要ですし、ドナーの方も、提供後の健康を保証しなければなりません。例えばドナーの術前検査で血糖値に異常があれば、食事や運動でそれを改善させなければ提供はできません。そのような期間を含めるとかなり日数がかかっていますね。そのため、最低でも初診から腎移植まで半年はみていただいた方がいいと思います。術前検査は腎臓内科の先生たちが主として行っています。腎臓を提供したいと思って検査を受けることは、ご自身の病気を見つけるきっかけにもなることがあります。
移植によって得ることができたもの
移植をしてから一番良かったこと、うれしかったことは何ですか。
末野さん:
自分のこれからの将来について、もう一度きちんと見つめ直すきっかけになったことが一番良かったことだと思います。
お父様:
息子が、きちんと働き、しっかりとした人生を歩んでくれていることですね。それと、良いお嫁さんが来てくれたこと、孫ができたことです。
現在、挙児を希望して移植手術を控えている、男性患者の方にアドバイスはありますか。
末野さん:
やはり奥様とよく話をされたほうがいいと思います。遺伝的に子どもの将来が心配になることは、私ももちろんあるのですが、子どもに対して私ができるのは楽しく生きることだと思っています。私は腎臓を提供できないですから、「お父さんも楽しそうだし、僕も楽しく生きていけるのかな」と思ってもらえるようにするのが、役割だと思っています。そのような心持ちでいることが大切なことだと思いますね。
現在、移植手術を控えている、または移植手術を検討している方へメッセージをお願いします。
お父様:
リスクもあることですので、手術前は当然不安だと思いますが、「案ずるより生むが易し」かもしれません。私の場合は、提供ができて本当に良かったと思っています。
また、力石先生他、聖マリアンナ医科大学病院の先生方に大変感謝しています。腎移植、人工透析を開発・実用化・改良してくださった方々、腎移植、人工透析の健康保険対象化を実現してくださった方々にも大変感謝しております。
最後に、先生からもメッセージをお願いします。
力石先生:
末野さんのお母様も日本臓器移植ネットワークに登録をしていると思うのですが、まだ献腎移植が実現されておりません。「日本の社会全体で臓器提供がすごく少ない」ということを、末野さんのお母様のような方が一番感じておられると思うのです。末野さんもご自身の移植の際、「お母さんを差し置いて自分がもらっていいのか」という気持ちが心の中にはあったかもしれません。生体腎移植も決して悪い方法ではないと思いますが、健康な人を傷つけなければなりませんので、我々も更に努力をして、献腎移植を増やすための活動を進めていかなければならないと考えています。