ご主人の愛情に支えられて
退院後は、どのように過ごされて いますか。
中西さん:
退院後は主人がすごく家事を手伝ってくれ、夜の食器洗いと掃除は全部してくれています。
でも、一番感謝しているのは、退院後2日目くらいから、「歩け歩け、歩かなきゃ」 と、スパルタで歩かせてくれたことですね。私は入院中に筋肉が落ちてしまい、退院後は足が重くてうまく歩けなくなってしまいました。主人は、「杖を付いて歩いているのを、ご近所の方に見られたらかわいそうだ」と言って、車で遠くの神社まで連れていってくれ、歩く練習をさせてくれたのです。退院してから11月までの5カ月間、朝と夜、ほとんど毎日、歩きに行きました。その甲斐あって、去年ぐらいまでは、洗濯物のカゴも主人に2階まで運んでもらっていたのですが、今年はとても元気になり、すべて自分でできるようになりました。
吉田先生:
それはとても良いリハビリでしたね。若い人でも2週間も入院していると、立てなくなってしまうこともあるのですよ。
ご主人:
歩き始めた当初は少しきつかったかもしれませんが、だんだんと歩けるようになっていったのが、本当にうれしかったですね。
中西さん:
病院の外来の待合室で、移植者のお友達がたくさんできたのですが、中には車いすに乗っている人もいらっしゃるので、その方に、「どうして歩かないの?」とお聞きしたら、「歩けない」とおっしゃるのです。ですから、「退院したら、すぐに歩くことが大事よ。歩けないのではなくて、努力しないと駄目よ。」とお話ししたりしますね。いつまでもご家族が助けてくれると思ったら駄目です。 自分のことですからね。
大事な腎臓を撫でながら
移植後、ご主人に対しては何か特別にイベントなどは行っていますか。また、今後何かしたいと思っていることはありますか。
中西さん:
これまでは、なかなか体力が戻らず体調が落ち着きませんでしたので、特別なことはしていませんが、今後は主人とともに元気に仲良く、お互いにいたわりあって、今まで通り楽しく過ごしていきたいと思っています。
移植をしてから一番良かったこと、うれしかったことはどのようなことですか。
中西さん:
塩分・タンパク質・カリウム・リンなどには注意するものの大きな制限はなく、たっぷり水が飲めて、何でも食べられるようになったことです。あとは、普通に排尿ができることですね。
ご主人:
妻は、移植直後は体力が回復するのに時間がかかりましたので、本当に透析する以前に近い状態まで回復するのかどうか、不安がありました。でも、年月の経過とともに安定し、元気になって本当に良かったと思っています。最近は元気すぎて、私に対していろいろと注文が厳しいくらいです(笑)。
移植後の日常生活では、移植腎のために、特にどのようなことに気を付けて生活をしていますか。
中西さん:
移植した腎臓を冷やさないようにし、夜は毎晩「ありがとうね」と言いながら、おなかのあたりを撫でながら休んでいます。移植していただいた腎臓は自分のこぶしよりも大きいですから、おなかを触ると分かるのです。立っているときは、くりっとした感じなのですが、寝るとポコンと浮き上がります。何か体にきついことをして、移植腎に影響してしまうと困るので、「あまり荒っぽいことはしないように」と思いながら撫でています。また、私はシャントを閉じていないため、シャントの部分をぶつけたりしないように気を付けています。
先生、術後はシャントの閉鎖はしないのでしょうか。
吉田先生:
閉鎖していいのですが、お守り代わりに、そのまま持っている方もいます。それと、「何かあったときのために」ということで、そのままにしている方もいらっしゃいますね。
中西さん:
私は、シャントを自らへの戒めのために残していますね。
日常の服薬はどのような方法で行っていますか。
中西さん:
朝食・夕食後の服薬については、携帯のアラームをセットして飲み忘れのないようにしています。移植後4年間、一度も飲み忘れたことはありません。 海外旅行のときも、日本時間に合わせて飲むようにしています。
ドナーも一緒の減塩食
ご主人はドナーとなられてから、特に気を付けていることはありますか。
ご主人:
ドナーである私が体調を崩すと、一番気にするのは提供を受けた妻だと思いますので、「私が元気でいないと駄目だ」と強く思っています。
食事に関しては、塩分には気を付けて、減塩の食事にしています。だいぶ慣れてきましたので、最近は普通のものが塩辛くて食べられなくなりました。
吉田先生:
お二人は、同じ食事を取られているのですか。
ご主人:
私の分だけは少し加減をして味を付けてくれているようですが、ほぼ一緒です。でも、妻がよそ見をしている間に、ちょっと醤油(減塩醤油)をかけたりしますね(笑)。
ご主人は、お酒は飲まれるのですか。
ご主人:
毎日だいたい1合くらいは飲みますが、週に1日は休肝日を作るようにしています。
米田先生:
適度なアルコール摂取は、飲まないよりも良いのですよ。1日1合は適度な量だと思います。正確に言うと、8勺ぐらい、つまり1合弱ぐらい、ビールだと中瓶1本ぐらいが良いようです。
ドナー検診はどのくらいの頻度で受けていらっしゃいますか。
ご主人:
6カ月に1回、検診を受け、人間ドックを受けるような感じで、「できるだけいろいろな検査をしてください」とお願いしています(笑)。
吉田先生:
普通は、「1年に1回でもいいですよ」と言うのですけれど(笑)。
定期的にきちんとチェックしているので、もし何かあっても早期に発見できますね。
ご主人:
はい。おかげさまで、とても元気にしています。