2人で自己管理
手術の直前にはご夫婦でどのような話をされましたか。
政二さん:
「じゃあ行こうか」と言っただけですね(笑)。妻と一緒に手術室まで行き、私の方が先に入りました。
手術が終わった時のことは覚えていますか。
政二さん:
SICU(外科系集中治療室)に妻と並んで入っていたのですが、看護師さんが声をかけてくれて目覚め、「隣に奥さんがいますよ」と教えてくださったので、「おーい」と声をかけたら、妻はうれしそうに笑っていました。
光子さん:
看護師さんが声をかけてくれ麻酔から覚めた時に、主人が隣から声をかけてくれ、手術が無事に終わったことを聞き、ほっとしました。
また、ちょうど先生方が様子を見に来られて、ある先生が、私のお腹の腎臓を移植した部分を見て、なぜポコンと出ているのかという質問をされたところ、執刀医の先生が、「ご主人の脂肪をそのままつけておいたからね(笑)」と冗談を言うので、おもわず笑ってしまいましたね。
政二さん:
当時私は脂肪をたくさん蓄えていましたから(笑)。
移植後の経過はいかがでしたか。
光子さん:
基本的には良好でしたが、2回ほど感染症で高熱が出て入院しました。
政二さん:
感染症の原因ははっきり分からなかったのですが、これは私の考えですが、腎生検のための入院中、足が少し不自由な妻は、トイレに行くのに毎回看護師さんを呼ぶのは悪いと思い、あまり水分を取らなかったので、それが良くなかったのではないかと思っています。2回目の入院の際に、先生から水分を多く取った方がいいと言われ、それ以来、かなり多めに取るようにしてからは何もありません。
移植前はあまり水分を取らないように言われていましたので、移植後は逆になるものですから、慣れるまでには時間がかかりますね。
こちらの病院では移植後の水分摂取についてどのようなお話をされているのですか。
渡邉コーディネーター:
1日、1.5~2Lくらい尿が出るように水分を取っていただくようお話ししています。また、たくさん汗をかいたときや下痢をしているときには、その分を加味して追加で飲んでもらっています。
光子さん:
現在は、飲み物はなるべく常温で取るようにして、夜中にお手洗いに行ったら必ず1口でもいいので飲むようにしています。あとは食事の際に少し多めに飲むようにしています。
日々の血圧、体重の管理はどのように行っていますか。
光子さん:
朝食前に、体温、血圧、体重の測定、夕食前に、体温、血圧を測定するようにしています。
渡邉コーディネーター:
やはり血圧は毎日測ってほしいですね。外来の際には血圧の記録などを確認しています。また、体重増加が気になる方には、万歩計を付けることをお勧めし、その記録で1日どのくらい歩いているかを確認したりします。
政二さん:
妻の体重測定と合わせて、自分の体重も毎日量っています。妻の体重はあまり変動しないので、私が少し増えると、すぐ注意されます(笑)。
以前は、仕事の付き合いなどでよくお酒を飲んでいましたので、手術前の体重は75kgくらいありました。腎提供後、先生や渡邉さんなどから、やせた方がいいと何度も言われ、ダイエットに挑戦して、68kgまで体重を落とすことができました。以前はいていたズボンはどれもゆるくなって、はけなくなりました。ドナーになったことをきっかけに、自分自身の健康管理もきちんとできるようになったと思います。ただ、最近また体重が増加傾向にあるので、もう一度頑張ってダイエットしようと思っています。
服薬管理はどのように行っていますか。
光子さん:
薬は主人と一緒に日付と服用タイミング(食前や食後)を書いた小さいジッパー付きの袋に小分けにして入れ、毎朝1日の服用分の小袋を出して、別の袋にまとめて入れています。服用した後は残った袋に薬の殻を入れ、全部飲んだかをチェックしてから、袋ごと捨てるようにしています。小さい袋をたくさん買わなければならないのですが、この方法だと飲み忘れがありません。
私は目が悪いので、主人が先に薬を袋に入れてくれ、それを自分でチェックしています。すべての薬をセットし終わった後に薬が余っていたりすると、「ひょっとして〇〇が入っていないんじゃない?」などと言って2人で確認しています。
ドナーとレシピエントが、術後の自己管理をお互いにチェックし合えるのは、夫婦間移植のいいところの一つですよね。
渡邉コーディネーター:
そうですね。例えば親子間の移植ですと、別々に生活している場合が多いので、夫婦間移植のようにはなかなかいきませんね。
政二さん:
服用している薬の種類が多い人は、本当に大変だと思います。妻の場合も免疫抑制薬の他に、血糖降下薬、降圧薬、コレステロール降下薬、感染症予防薬、とさまざまな種類の薬を飲んでいますので、最初の準備は大変ですが、このような管理をしないと飲み忘れが起こると思います。