腎臓だけでなく、他領域の治療の進歩もあり、今では腎移植を行うことができない腎疾患はほとんどありません。腎移植により末期腎不全(CKD5、血液透析、腹膜透析)から脱却することは、CKD患者さんの生命予後に大きく影響を及ぼします。ただ、その移植腎機能は継続させなければいけません。
2010年以降の生体腎移植の5年生着率は94.3%と極めて良好となっています(1)。最近の免疫抑制薬の進歩により、急性拒絶反応がコントロールできるようになってきた現在では、生体腎移植の生着年数は、ドナーの年齢により、ある程度予測できるようになってきました。

再発腎炎とは

腎不全になった原因の腎疾患(原疾患)が腎移植後に再び発症することを再発腎炎とよびます。これに対して、腎移植後に発症した、原疾患ではない腎疾患がde novo腎炎です。de novo腎炎を予想することはできませんが、再発腎炎に対しては、移植前後に対応できることがあります。
予想された移植腎生着年数とかけ離れる可能性をきちんと説明するためにも、CKD早期において自己腎生検により原疾患を把握することは大切です。腎生検の結果がないときでも、家族歴、検尿異常が見つかった時期、発症から腎不全までの期間、治療の内容とその反応性などを参考にして再発の可能性を予想することは重要です。

腎生検

原疾患により再発率や治療への反応性は異なります。再発率は免疫抑制薬の進歩とともに変化するので、新しいデータを参考にすべきです。通常の再発率は、移植腎生検により判明したものを指しますが、再発腎炎を発症しても軽微な検尿異常にとどまるときには、腎移植のメリットは大きいです。そのため再発率の中から、移植腎生着年数が明らかに短くなるような再発腎炎はどれくらいの割合があるのかを把握しておく必要があります。移植時年齢が若年(2)のとき、発症から末期腎不全までの期間が短いときは特に注意が必要です。

腎移植前の対応

腎移植前の対応は、
①予想される移植腎生着年数を大きく下回る可能性から、腎移植を選択しない
②原疾患の活動性が弱まるのを待つために、しばらく透析療法を行なった後に移植を選択する
③再発を防ぐための治療を追加しながらそのまま腎移植を予定する
④再発率が低いため、そのまま腎移植を予定する
これらの4つに分けることができます。

腎移植後の対応

腎移植後は蛋白尿や尿沈渣でスクリーニングをしますが、まずは拒絶反応との鑑別が必要です。移植腎生検により急性、慢性拒絶反応を除外して、再発腎炎やde novo腎炎と診断されたときには治療を開始します。

検査

ほとんどの腎炎は免疫抑制療法を治療とします。腎移植による免疫抑制療法下で、再発してくる腎炎に対しての免疫抑制療法は、過剰投与になることをいつも考慮しておかなければいけません。自己腎に対する腎炎の治療と違い、しっかりとしたエビデンス(証拠)がないのが実際です。


1.八木澤 隆, 三重野 牧子, 市丸 直嗣, 森田 研, 中村 道郎, 堀田 記世彦, 日本臨床腎移植学会・日本移植学会. 腎移植臨床登録集計報告(2018)2017年実施症例の集計報告と追跡調査結果. 移植. 2018;53(2-3):89-108.
2.Allen PJ, Chadban SJ, Craig JC, Lim WH, Allen RDM, Clayton PA, Teixeira-Pinto A, Wong G. Recurrent glomerulonephritis after kidney transplantation: risk factors and allograft outcomes. Kidney Int. 2017;92(2):461-69.