大切な腎臓のために
移植後はどの様なことに気を付けて生活をしていますか?
植木さん:
移植腎を圧迫することが無いように、転倒しないことや腹部を強打しないように気を付けています。孫がまだ小さいので、孫と遊ぶ時はひやひやしますね。孫は私に向かって力いっぱい突進してくるので、「お腹には乗らないで」と言っています(笑)。
また、食生活に関しては、まめな水分補給と減塩食を心がけています。
ご主人(ドナー):
私も妻と同じく、水分補給と減塩食を心がけています。移植後、減塩の食事に慣れたことは非常に良かったと思っています。私は元々高血圧で薬も服用しており、食事は減塩にしなければならなかったのですが、濃い味付けが好きでしたので、減塩食に抵抗がありました。しかし、腎臓が1つになると必然的に自分の健康にとても気を付けるようになるので、自然と減塩食を食べるようになりましたね。
日常の服薬や、血圧、体重などの記録はどの様な方法で行っていますか?
植木さん:
血圧・体重記録に関しては、音声血圧計と音声体重計で測定し、主人に点字キーボードで記録してもらい、エクセルに入力して保存しています。
また服薬に関しては、病院で処方して頂く際に、薬剤師の方に薬の種類毎に、袋に大きくマジックで薬剤名を書いて頂くようにして判別しています。
八木澤先生:
植木さんにご自宅での管理表を見せて頂いた際、点字でこの様に入力が出来るということを知りました。大変驚きました。退院前は退院後のご自宅での管理を心配していたのですが、きちんとご主人が記録されているのを見て、これは大丈夫だ、安心だと思いましたね。
移植後、熱中していることや、今後の夢はありますか?
植木さん:
趣味のコーラスを今後も長く続けていきたいと思っています。
ご主人(ドナー):
私は手術後2週間で鍼灸師の仕事にも完全に復帰しました。現在は仕事に関係する組合活動も行っており、毎日忙しくしています。今後は後進の育成にも力を入れていきたいと思っています。
移植を検討されている方へのメッセージ
移植を検討されている方や移植を予定している方にメッセージを頂けますか?
植木さん:
私は視力が弱く、目の前のものしか見えませんが、入院中も看護師さんや多くのスタッフの方に助けて頂き、困る事もなく入院生活を送る事が出来ました。現在もサポートを頂きながら安心して外来通院も出来ています。ハンデがあっても全く問題なく移植手術を受けることができました。
もし移植を検討している方がいらっしゃるのであれば、移植することで元気になることが出来、水分制限もなくなり、本当に自由に飛びまわれるようになるという事を知って頂きたいです。もしドナーとなって頂ける方がいらっしゃるのであれば是非挑戦して頂きたいと思います。
ご主人(ドナー):
移植によって私達の生活は明るくなりました。食生活や行動範囲も変わり、生活そのものが明るくなりました。私達夫婦は視覚に障害がありますが、移植に際しては障害がある、無いは関係ないと思っています。
腎移植は家族すべての将来の生活を安定させることが出来る最高の手段だと思いますので、もし移植手術を受けることが可能なのであれば、まずは移植を第一選択の治療として考えてみてはどうでしょうか。透析はいつでも出来るのだという考えでいてもいいのではないかと思います。
ドナーになることが出来る適応年齢を超えてしまってからでは移植は出来ないと思いますので、まずは様々な手段で情報を得て、ご家族で相談してみることをお勧めしたいです。
先生、何歳くらいまでであればドナーとなることが出来るのでしょうか?
八木澤先生:
身体の年齢と暦の年齢は違いますが、70歳代くらいまでの方で提供を希望される方がいらっしゃれば、適応があるかどうかの検査をさせて頂き、検査の上、問題がなければ提供可能と判定しています。当院では最高で80歳のドナーの方がいらっしゃいました。現在一番多い年齢層は、60歳代の方です。日本の場合、生体腎移植におけるドナーの年齢は60歳以上の方が4割くらいを占めています。
最後に先生からもメッセージを頂けますか?
八木澤先生:
植木さんの場合はご主人が色々な情報を入手されて、よく検討され、移植という治療を選択されました。治療法を選択される中で、まずは移植が出来るうちに移植をし、将来的には透析も検討しようという風にお考えになられました。今後、植木さんのような選択をされる方が増えてくると思います。
移植に関する様々な情報をご自身で積極的に入手し、ご家族で相談され、納得できる治療選択を行って欲しいと思います。