札幌北楡病院 レシピエントインタビュー第4回目は、約15年間の透析治療をへて、76歳の時に奥様がドナーとなり生体腎移植手術を受けられた佐藤時由さんです。
移植を受けられるまでのお話や、移植医療との出会い、そして移植後の現在、充実した毎日を過ごされている様子をお聞きすることができました。

佐藤さんが移植を受けるまでの経緯

  • 1985年(49歳) 蛋白尿を指摘される
  • 1997年4月(61歳) 慢性腎不全と診断される
  • 1997年11月(61歳) 血液透析導入
  • 2012年3月(76歳) 生体腎移植手術

透析導入へ

病状が出始める前の生活を教えてください。

佐藤さん
自分ではとても健康だと思っていました。ただ、1年半に1回くらい足が痛くなるようなことがありましたが、1週間もすればすっかり良くなっていたので、あまり気にしていませんでした。今思えば痛風でした。

その後、透析導入されるまではどのような状況だったのでしょうか。

佐藤さん

佐藤さん
1985年(49歳)の時に、尿蛋白を指摘されていたのですが、当時は仕事がとても忙しく、総合病院に行けば半日はかかってしまうのが分かっていたので、ついつい病院でしっかりと調べてもらうことを避けてしまいました。
その後、近くのクリニックに通院していたのですが、腎臓の専門ではなかったためか、あまり注意もされず、「少し進行していますね」とだけ言われていました。今思えば、その頃にしっかりと診てもらえば良かったと思うのですが、結局、退職した時に半日ドッグを受けたら、「腎臓に問題があるので専門の病院に行くように」言われました。病院に行くと、専門医から、「佐藤さん、あと半年で透析ですよ」と言われました。そこから初めて食事制限なども始めたのですが、時既に遅かったようです。


奥様(ドナー)
結局、私達はそれまで本当に無知だったのだと思います。

移植医療との出会い

移植に関しての情報や知識は、いつ、どのようにして知ったのでしょうか。

佐藤さん
透析になった時に、慢性腎不全の治療法として血液透析、腹膜透析とあわせて移植があることを資料などで知りました。ただ、自分にはドナーなどいないと思っていましたので、移植医療は自分には関係ないものだと思っていました。
また当時、透析仲間が献腎移植の登録をしていたのですが、「何年たっても来ないよ」という話もあり、余計に関係ないものだと思っていました。妻からもらうことができるなんて思ってもいませんでした。

移植手術を受けようと思ったきっかけを教えてください。

血液透析中

佐藤さん
透析をしていた病院の腎臓病教室で、たまたま、以前札幌の病院に勤務していた看護師さんから、「70歳を超えていても移植手術を行っている病院もあります」というお話をお聞きしました。その時、いつもはそのような勉強会には出席しない妻がたまたま同席していて、「それなら私たちでもできるかもしれないわね」という話になり、妻が積極的に話を聞くことになりました。
実はそれまでも移植についての話を聞く機会があったのですが、概ね70歳くらいまでという話を聞いていたので、当時既に70歳を超えていた自分は対象外だと思っていました。


奥様
私の方は、主人を何とか透析生活から解放してあげたいと思っていたのと、今を逃したらもうチャンスは来ないと思い、詳しく話を聞きましたね。

移植に向けての準備

三浦先生と初めて移植について話したのはいつ頃ですか。

佐藤さん
2011年11月17日に手術担当の三浦先生と腎臓内科の伊藤先生にお会いしました。三浦先生から移植の概要の説明と問診を受け、伊藤先生からも問診を受け、採血を行いました。そして今後の検査の日程などをお聞きました。


三浦先生
実は、佐藤さんは移植前の検査で大腸がんが見つかったのですが、幸い早期がんでしたので、それをしっかりと治療して、移植手術を行うことになりました。


奥様
本当にがんが早期に見つかって良かったです。札幌北楡病院で三浦先生に出会えたことに感謝しています。

移植手術を受けるに際し、ドナーとなられる奥様とは何か特別にお話はされたのでしょうか。

佐藤さん
妻の方がより積極的に移植の話を聞いていたこともあり、二人では日程の話くらいしかしませんでした。


三浦先生
結婚48年目ともなると、もう言葉を交わさなくても大丈夫なのでしょうね。

奥様はドナーになることに心配や不安はありませんでしたか。

奥様

奥様
夫の検査が次々とクリアしていく中で、もしも私が次の検査で臓器提供できなくなったらどうしようかと、とにかくそれだけが心配でした。三浦先生を信頼していましたので、手術への怖さなどは全くなく、一切心配していなかったです。


三浦先生
女性は度胸がありますね。

三浦先生、ドナー候補の方が原因で移植ができなくなるケースはどのくらいあるものなのでしょうか。

三浦先生
大体2~3割でしょうか。検査をすると、意外とドナー候補の方の腎機能が低下していることがわかることも多いです。また、糖尿病の方のパートナーは同じ食生活をしていることが多いので、そうするとパートナーの方も糖尿病に近いこともあります。

移植手術が決まってから、実際の手術までの期間はどのくらいでしたか。またその期間の生活で特に気をつけていたことがあれば教えてください。

佐藤さん
2011年12月の最後の検査で大腸がんが見つかり、12月末に手術を受け1月中旬に退院しました。2012年3月8日にクロスマッチ検査の再検査がOKとなり、3月19日に入院し、3月27日に手術を行うことが決まりました。手術までの11日間はとても慌ただしかったです。