透析からの解放
移植手術を終えた時の心境を教えてください。
佐藤さん:
ICUで目が覚めすぐに尿が出て、15年間の透析から解放された事を実感した喜びと、感謝の気持ちで一杯でした。
奥様:
すぐに尿が出た、ということを隣で聞いたときにはびっくりしたと同時に、本当に感動しました。その後しばらくは、今度は尿が出過ぎて大変そうでしたね。
三浦先生:
実は佐藤さんは(尿の出し方をコントロールしている)抗利尿ホルモンが出ていなかったようで、尿が16リットルも出る事があり、最初はその調節が大変でした。透析時代は無尿になっていたので、抗利尿ホルモンが出なくなっていることがわからなかったようです。全国でもあまり例のない、非常に珍しいケースでした。
移植手術後の経過はどうでしたか。
佐藤さん:
尿量の調節のための期間が1カ月以上かかり、結局退院まで2カ月程度かかりました。退院後、半年くらいは体力の回復に時間がかかりましたが、今は元気で順調です。
20年ぶりの3 泊4日の旅行
移植後、ドナーの奥様に対しては何か特別にイベントなどは行っていますか。
佐藤さん:
5月に退院して、体調も少し回復しつつ2013年の新年を迎え、妻の妹家族と新年を祝いました。透析中はほとんど旅行をしませんでしたので、元気な妻とゆっくりと旅行をして慰労をしたいと思っています。
移植をしてから一番良かった事、うれしかった事は何ですか。
佐藤さん:
左腕は既にシャントを作るスペースが無く、動脈表在化をし、右腕に造成したシャントも一度も使えずに停止したため、透析の限界を心配していましたので、高齢にもかかわらず移植が出来たことが何よりもうれしかったです。
奥様:
透析をしている間は、2泊以上の旅行をしていなかったのですが、今年(2013年)は約20年ぶりに3泊4日の旅行をしました。道東の方に行ってきたのですが、主人の制約が無くなったせいか、本当に楽しかったです。11月に、主人の姪の娘の結婚式に招かれて、2泊3日で東京へも行ってきました。
佐藤さん:
私は自分が通っている透析施設以外の病院で透析をするのが嫌で、透析をしていた15年、なかなか遠出や連泊をしませんでしたので、連泊で旅行ができるようになって本当にうれしかったです。
大切な腎臓のために
移植後の日常生活では、移植腎のために特にどのような事に気を付けて生活をしていますか。
佐藤さん:
朝はラジオ体操をして、寝る前にはスクワットをしています。また、妻と一緒に保健センターで実施している、高齢者向けの「転ばないための体操」教室に月2回通っています。食生活においては、十分な水分補給をし、刺激の強い食品は控えるようにしています。
札幌北楡病院では、移植後の運動はどのように指導されているのでしょうか。
三浦先生:
その方の状態に応じて、院内の理学療法士さんに指導してもらっています。また、肥満が問題になる方には、減量のためのプログラムを栄養指導とセットで行っています。
佐藤さん:
私も退院するまで、理学療法士の方にみっちりと指導していただききました。
三浦先生:
肥満がある方には、3カ月ごとに筋肉量などの体組成と体力測定を行い、その結果をもとに指導してもらっています。また、日々の食事の写真を撮影してきてもらい、管理栄養士さんから指導をしてもらっています。移植後はもちろん、移植前でも、肥満で移植ができない方には、この運動と栄養指導のプログラムに入ってもらっています。
佐藤さんはやせているので、逆にもっと食べていいと思いますね。
佐藤さん:
食事はおいしいのですが、あまり量を食べないせいでしょうか。体質的にも太らないようで、未だに50年前の20代の時に作ったスーツが着られるくらいです。
三浦先生:
太らないこともすごいですが、物持ちが大変いいのですね(笑)。
日常の服薬や、血圧、体重等の記録はどのような方法で行っていますか。
佐藤さん:
一番大切な免疫抑制剤は、9時と21時の服用時間を携帯電話に入力し、飲み忘れがないように心がけています。血圧、体重は入院中のデータ用紙をコピーし、記入して通院時に病院へ提出しています。血圧は透析導入になった時から15年以上、朝と夜のデータを日記に記録しています。
血圧や体重等の記録は病院で指導されているのでしょうか。
三浦先生:
特別に指導はしていませんが、2~3割の方は自発的に記録して診察時にお持ちになられています。記録をされている方は管理もしっかりしていることが多いですね。