美味しい食事を笑顔で食べて

移植をしてから一番うれしかった事はどのようなことでしたか。

お母様
病気になってからあまり食べることが出来なかった光希が、笑って食事がとれるようになったことが本当にうれしかったです。もともと食べるのが好きなのもあって、術後はかなり早い段階で食べられるようになり、鼻の管も抜けていき、以前の元気な光希に戻ってくれました。
また、退院後、元気に毎日保育所に通って、お友達と遊べるようになったこともうれしかったです。とにかく、あたり前の生活ができるようになったことが本当にうれしかったです。
あたり前の生活は誰でも普通にできるものだと思っていましたが、自分の息子がこうして病気になったことで、「健康は本当にありがたいことなのだな」と、心から思いました。


手術後の様子


日常の服薬や、血圧の記録はどの様な方法で行っていますか。

お母様
朝起きて血圧を測り、食前に薬を飲むようにして飲み忘れを防止しています。今はまだ小さいので親が管理していますが、いずれは自分で管理できるように練習していきます。
また、まだ自分ではよく理解できない時期に手術をしていますので、小さい時に手術をしたことを後々理解できるように、手術の時の写真や入院してからの経過の様子を写真集にして、見せるようにしています。いずれはきちんと自分の状況を理解してもらいたいと思っています。

野島先生、小児の移植後のフォローはどのようにされているのですか。

野島先生
小児の移植者の場合は、成長と発達の問題がとても大事なので、免疫抑制剤も含めて小児科で診てもらっています。泌尿器科は術後合併症や移植腎生検をする際に一緒に診るようにしています。

移植後、新たに始めた事や、今後の夢はありますか。

お母様
今年から保育園に入りました。風邪を引くことも多いですが、お友達からいい刺激をもらって言葉もかなり成長し、生活面でも自分で出来ることが増えてきました。今の目標は、元気に保育園に毎日通うことです。


お姉ちゃんと一緒に保育園に登園


お父様
光希には、やはり将来は自分できちんと稼いでいくことが出来るようになってほしいと思っています。


野島先生
確かに、大きな病気を抱えていると、経済的にも社会的にもいろいろと大変なことも多いですので、自立というのは決して簡単なことではないので、大変大事な視点だと思います。

「移植」 健康を分けてあげる医療

兵庫医科大学病院の先生方へお伝えしたいことはありますか。

お母様
多くの先生に関わっていただき、またとても良くしていただき、大変感謝しています。特に、今はいらっしゃらないのですが、小児科の女性の先生には大変良くしていただきました。お休みもないくらい毎日来てくださり、いろいろなことを細かく説明していただいたお陰で、それほど不安もなく光希を手術に送り出すことができました。

最後に、現在移植を検討しているお子様をお持ちの方にメッセージをお願いします。

お父様
普段から妻には、「何かあっても絶対に泣くな」という話をしています。病気になったものは仕方がない。それをいくら考えても仕方が無いので、今からどうすればいいのかを考えるようにして、「入院をしても、それは普通の日常としてもっと楽しむようにしよう」と言っています。
また、入院するようなことがあると、その分より入院していない時の生活が楽しく思えるようになるので、常に前を向いていってほしいと思います。


お母様
光希の場合、腹膜透析もしましたが短期でしたし、透析経験がほとんどないのであまり言えませんが、移植によって生活の制限がほとんど無くなったことは本当に素晴らしいことだと思いました。
入院中に何度か外泊許可をもらって自宅で過ごす機会があったのですが、光希はタンパク質を制限しないといけませんでしたので、大好きなハンバーグを少ししか食べることが出来ず、兄弟たちはいっぱい食べているのに、と泣き出してしまうことがありました。その時、小さい子どもに我慢をさせるというのは本当に難しいと感じました。今ではお薬の時間はありますが、それ以外は何も制限なく生活できているということが本当に幸せです。


御祖母様
手術前は、臓器移植はとても大変なイメージがあったのですが、今は「健康を分けてあげる」医療だと思っています。自分の健康を分けてあげて、この子の命を繋ぐことが出来、本当に良かったと思っています。


谷澤先生
子どもの腎不全治療において、現時点では透析治療は不完全です。透析では腎不全の状態は変わらないので、それでは子どもは大きくならないのです。移植をすると多くの子どもさんが大きくなるので、現時点では移植にかなうものはないです。ただ、ドナーの問題がありますので、今後の医学の発展の中でその問題が解決してくれればと思います。
また、子どもの移植の場合は、1回だけで終わりというわけにはいかずに、2回目、3回目がありますので、確かに難しい問題ですが、余計にドナーの問題を解決できるようにしないといけないと思います。


野島先生
今日は、お三方(お父様、お母様、御祖母様(ドナー))のお話をお聞きし、私自身もとても感動しました。もちろん、移植医療はいいことばかりではないですが、このような移植医療の現実の話が、より多くの患者さんにきちんと伝わってほしいと思います。まだまだ腎移植という選択肢を知らない方がたくさんいらっしゃるのが現実です。患者さんにとっては命綱である主治医から、移植医療の選択肢が提示されるようになることを望んでいます。

集合写真