ピーエスクリニック レシピエントインタビュー第2回目は、約7年前にお母様がドナーとなり生体腎移植を受けた大倉正暉くんです。正暉くんは生後半年で腎障害を指摘され、その後も入退院を繰り返し、6歳の時に腹膜透析導入となりました。その後、9歳の時に献腎移植の連絡をいただいたものの、急きょ手術を中断しなければならない事態となり、数カ月後にお母様がドナーとなり、生体腎移植手術を受けました。
高校生になり、身長も伸びてたくましく成長した正暉くんと、ドナーとなられたお母様から、さまざまなお話をお聞きすることができました。

大倉さんが移植を受けるまでの経緯

  • 2000年(生後半年) 血液検査にて腎障害を指摘される
  • 2003年(3歳) 膀胱尿管逆流防止術 左腎臓摘出術
  • 2006年(6歳) 腹膜透析導入、成長ホルモン注射開始
  • 2007年(7歳) 献腎移植希望登録
  • 2009年(9歳) 献腎移植手術、生体腎移植手術

病院を探して

正暉くんが生まれてから、腹膜透析導入となるまでは、どのような状況だったのでしょうか。

正暉くん八カ月ころ

お母様(ドナー)
正暉は生まれて間もないころから発熱することが多く、当時かかっていた近所の病院では風邪と診断されていましたが、なかなか治りませんでした。そのため、違う病院を受診して血液検査を受けたところ、腎障害を指摘され、すぐに総合病院に検査入院となりました。検査の結果、腎機能障害、左腎萎縮症、腎性高血圧と診断されました。
その後、入退院の繰り返しの生活が始まり、3歳のときには、膀胱尿管逆流防止術、左腎臓摘出術を行いました。

何歳のときに透析導入となったのでしょうか。

お母様
6歳のときに腹膜透析(APD)導入となり、同時に成長ホルモンの注射も始まりました。

正暉くんは当時のことを覚えていますか。

正暉くん
お腹から腹膜透析のチューブが出ていたことと、毎日おしりに注射(成長ホルモン)をされていたことは覚えています。

先生、慢性腎不全のお子さんの場合、成長ホルモンを打つことが多いのでしょうか。

北田先生
小児の腎不全患者さんの場合、身長が伸びないという成長障害が認められます。その場合、成長ホルモンの注射を打つことにより効果が認められる場合もありますが、十分に効果が出ない子供さんもいらっしゃいます。また成長ホルモン治療の適応基準は厳しく設定されています。腎移植後は身長が伸びるお子さんも多いですので、成長に関しても、移植の効果は圧倒的ですね。

お母様
正暉も、北田先生に初めてお会いした9歳の時の身長は120cmくらいしかありませんでした。(9歳6カ月の男の子の平均身長:133.6cm)
腎移植後約7年たった今は169cmになりました。

北田先生
当時は本当にかわいかったですよね。今は立派な青年になりましたね(笑)。

まさきくん入学前

腹膜透析導入後は、体調は安定しましたか。

APD

お母様
体調は落ち着きましたが、腹膜炎や尿路感染を起こすなど、導入後もいろいろとトラブルがありました。
APD(寝ている間に機器を使って自動的に透析を行う方法)を行っていましたが、学校では活発に動いていましたので、おなかのチューブを引っ張ってしまうこともありました。

当時、腎移植についてはご存知でしたか。

お母様
最初に腎機能障害の診断を受けた時に、「将来は移植が必要になりますので覚悟してください」と言われていましたし、腹膜透析治療中も尿路感染や腹膜炎などのトラブルがありましたので、早い段階で移植をしなければならないということは分かっていました。
初めは移植についての知識が全く無かったので、病院の先生から説明を聞いたり、専門書を買ったり、ネットで検索したりして勉強しました。