移植手術に向けて
移植手術に向けて、どのようなことに気を付けて生活していましたか。
楓さん:
塩分を控える、水分をたくさん取る、トイレを我慢しないなどです。
お母様(ドナー):
私はもともと年に1回、熱が出るか出ないかくらいしか病気をせず、とても元気なので、特に何もせず普通に生活していました(笑)。
移植前の検査や治療でつらいものはありましたか。
お母様(ドナー):
大腸の検査は2Lの下剤を飲まなければならなかったので、普段あまり水分を取らない私にとっては少しつらかったですね。それ以外は問題ありませんでした。
楓さんはどうでしたか。
楓さん:
移植前に何回か透析を行うとは思っていませんでしたし、透析の様子を見たことも無かったので、血漿交換のために初めて透析室に入った時にはびっくりしました。最初は首から管を入れて行っていましたが、私の場合は、最後は脚の付け根から管を入れなければならない状況となってしまい、それはとても痛かったですね。
いくつか大変な思いもされましたが、それ以外はお二人とも大きな問題も無く、検査も順調に進んだということですね。
平野先生:
そうですね。ただ、移植前の楓さんはしんどかったのか、とても元気がなかったので、移植までもつか少し心配でした。今のように明るく笑う様子も見たことが無かったので、反抗期かな?とも思っていました。
楓さん:
新しい病院に変わり、少し緊張していたというのもあると思います。でも、たしかに当時は反抗期でしたので、母とも今のように話はしなかったですし、友だちと遊んでいて、家に帰らなかったこともあります。髪の毛の色も今とは全然違いました(笑)。
手術前にはお母様とどのような話をしましたか。
楓さん:
手術の前日に部屋で話をしたと思いますが、「何時からやろ?」とか普通の会話でしたね(笑)。
涙が溢れて
移植手術を終えた時のことを覚えていますか。
楓さん:
術後、目が覚めた時に、祖母から「お母さんが楓は?って心配してる」と言われた時、手術が無事に終わったことと、母への感謝の気持ちで一杯になり、涙が止まらなかったことをすごく覚えています。
お母様(ドナー):
私は手術後夢を見ていたようで、起こされてはっとして、「楓は?」とまず聞きましたね。
楓さんの術後の経過はどうでしたか。
平野先生:
移植直後に少し拒絶反応が起こったことと、サイトメガロウイルス感染があり、初感染だったので、退院までは少しかかりました。それ以降は順調です。
楓さん:
サイトメガロウイルス感染では、2回入院したのですが、2回目は3週間くらい入院したのでとても長かったです。入院中は検査結果が書かれた紙を毎日もらうのですが、数値が下がりきらず、「退院まであとちょっと、あとちょっと」と毎日言われ続けていたことを覚えています。
お母様は手術後順調に回復しましたか。
お母様(ドナー):
術後は、すぐに歩いた方がいいと言われて、初めはベッドから起き上がるのもめちゃくちゃ痛かったのですが、頑張って歩きました。痛みが治まってからはとても元気でしたので、デイルームで他の入院患者さんのおじさま達と一緒に、高校野球を観て応援したりしていました(笑)。
また、移植後何日か経ったころ、楓と一緒にテレビを見ながらゲラゲラ笑って、お互いに「お腹(の傷)が痛い!痛い!」と言っていたことを覚えていますが、大笑いしたことで、さらに早い回復にもつながったような気がしています。私は術後1週間くらいで退院しました。
退院後もとても元気ですので、私は本当に健康なのだということを再確認できましたね(笑)。