父の愛情
最初はご主人がドナーになることを決めていたとのことですが、お父様でもドナーになれる可能性があると思ったのは何故でしょうか?
白水さん:
当時診てもらっていた内科、透析医の先生に移植の話をしたところ、「移植をするならお父さんでもできるかもしれないから、お父さんにも頼んでみたら?」と言われ、九州大学病院を紹介して頂いたのがきっかけです。
お父様にはどの様に話をしたのでしょうか?
白水さん:
北田先生に会いに行く前、夕食を食べている席で、父に「腎臓移植を考えているのだけど・・・」と話をしたところ、父はすぐに「わしの腎臓で良ければお前にあげるよ」と言ってくれました。後日改めて、「この間の話は本気にしていいの?」と聞いたときも「いいよ」と言ってくれました。
お父様はその時のことを覚えていらっしゃいますか?
お父様(ドナー):
一杯飲みながら夕飯を食べていて、その中で娘が移植を考えていることを聞き、何の抵抗も無く「自分ので良ければ」と答えましたね。恐怖心も何も全然無かったですね。
移植医療については知っていたのですか?
お父様(ドナー):
こっちからこっちに移すのだな、という程度の知識ですね。本当に簡単に決まってしまいましたね。でも、もちろん無理強いはされていないですよ(笑)。
北田先生との出会い
その後北田先生と初めて移植について話をしたのはいつ頃ですか?また、その時にはどの様な会話がありましたか?
白水さん:
2010年の2月8日です。忘れもしません、72歳の父の誕生日でした。夫と私の両親と4人で北田先生とお話ししました。
先生は、私の年齢を考えると移植をした方がいいという事と、再発する可能性がある病気なので、父の年齢でも健康であればドナーになれるので、今回は父にドナーになってもらう方がいいという話をされました。
そして「私達に任せておけば絶対大丈夫だから、絶対移植して良かったと思えるから」と言ってくださいました。
先生のお話を聞く前は、透析の方がいいのではないかと本当に思い悩んでいたので、この力強い言葉は涙が出るくらい嬉しかったです。
それまでの悩みも一気に無くなったのを覚えています。あとは父の健康のことが心配でした。
先生、ドナーになる場合の年齢制限はあるのでしょうか?
北田先生:
大体70歳くらいが目安ですね。ただ、年齢だけでいうと、当院でのドナーの最高年齢は79歳の方です。実際の年齢より、その方が元気で手術が安全に施行可能で、その後も元気でいられることが大前提です。
移植手術に向けて
移植手術を受けることが決まり、お父様とはどのようなお話をされましたか?
白水さん:
父とは普段から笑い話ばかりでしたから、その時も笑い話しかしませんでした。
昨年他界した母には「お父さんは病気でもないのに、手術でお腹を切ったりしてもし何かあった時には・・・」と何度も話しましたが、母は「私が病気じゃなかったら私の腎臓をあげたのに。心配しなくていいから、じいちゃん(父のこと)は大丈夫だから」と言ってくれました。
移植手術が決まってから、実際の手術までの期間はどのくらいでしたか?またその期間の生活で特に気をつけていたことはありますか?
白水さん:
4月中に私と父の検査は終わりましたが、先生から、私自身の腎機能をできるだけ使い切ろうと言われましたので、移植手術が決まってから実際の手術までは1ヶ月半くらいでした。
5月末までは事務のパートをしながら食事には気を付けて生活をしていました。4月末の時点で私のクレアチニン値は8㎎/dlくらい、手術のときには9㎎/dlくらいになっていましたね。
手術前日にはお父様とは何かお話をされましたか?
白水さん:
いつもの馬鹿話のような感じで「今日の夜怖くなって、病院から抜けだしたらいかんよ」と話をしていました。
お父様(ドナー):
私はどちらかというと、びびりなんですよね(笑)。