縁の下の力強い貢献
現在は朋友会(患者会)の事務局長をされていますが、朋友会の活動を始められたきっかけは何だったのでしょうか?
飯田さん:
現在の日本移植者協議会の理事長の方と知り合う事があり、その方からお誘いを受けて、手伝うようになりました。
打田先生:
患者会の活動は、同じ境遇にある他の患者さんのために働くと言うことだけでなく、ご自身にとっても今までの自分の環境とは違う人と沢山知り合いになれます。それで、ご自分への良い刺激にもなりますよね。
飯田さん:
そうですね。『人との出会いがあるから患者会の活動を続けている』というのもあるかもしれません。家に閉じこもっていると、余計な事を考えてしまいますしね。透析の時は体がしんどかったので、家にいて休んでいましたが、移植後多少元気になってくると、『何かがしたい』という欲求が出てきました。
患者会の活動は既に6年位行っているのですが、事務局なので裏方なものの、色々な方に覚えて頂いているのか、お子さんの結婚の事を相談されたりと、病気以外の事も相談されたりします(笑)。
打田先生:
先日は、朋友会の企画・主催による女性腎移植患者さん限定の勉強会『女性レシピエントのための慢性腎不全・腎移植後の産婦人科疾患(生理・妊娠・癌)』が行われました。62名の女性患者さんが集まりました。女性限定でしたので、飯田さんなどの男性スタッフは席を外され、女性患者さんには、男性の目を気にしなくて十二分に質問ができる雰囲気が用意されていました。
今までの勉強会は、ほとんど私たち移植医が講師を務めていましたが、今回は移植には関係しない産婦人科専門医が担当されました。勉強会当日、婦人科医の先生に対して患者さんから吃驚するほど非常に多くの質問が出たのには、私も吃驚しました。
私達移植医は、移植患者さんの出産のケースを多く経験しているといっても、婦人科医の先生に比べたら天と地の差です。婦人科医の先生がその領域の専門家として頂ける答えが、やはり、移植患者さんを安心させているのだなぁ、と印象深く感じました。やはり、「餅は餅屋に任せろ」ですね。
最近の免疫抑制剤の進歩は拒絶反応をコントロール可能にし、「移植腎の長期生着=患者長期生存」の時代になりました。移植腎を長く持たせるには、『いかに生活習慣病を克服し長生きすること』と同義語になってしまいました。これからは、ドンドンと糖尿病や循環器、癌などの専門医をお招きし、移植患者さんにお話をしていただく。私たち移植医は、そのお話を移植という特殊状況下に翻訳して患者さんに理解していただく脇役なんですね。是非、色々な勉強会を患者さん自身で企画してください。喜んでお手伝いします。
決して諦めない心
打田先生:
飯田さんは、「諦めない、何事にもチャレンジする」気持ちを持った患者さんです。移植手術後に退院も出来ずに入院中に移植腎が駄目になってしまったという辛い事がありながらも、その後の治療や日々の生活などに前向きに取り組み、2度目の移植手術を受け、元気な今があります。飯田さんの前向きな姿は、周囲の方々に非常に勇気を与えています。
飯田さん:
1回目の移植後、ある程度の期間は葛藤がありましたが、それを乗り越えたと思ったとたん、大腿骨骨頭壊死が発覚しました。しかし、徐々に気持ちが強くなっていたのでしょうか、「こんなもんか」と思ってそれも乗り越え、病気に向き合ってきました。
こう話すと、何か私だけが頑張っているように聞こえてしまうかもしれませんが、家族であったり、病院関係者であったり、周りの人に支えられてどうにか生活しています。これからも周りの人への感謝を忘れずに生活していきたいと思っています。