ゴールを決めて
移植をしてから一番良かったこと、うれしかったことはどのようなことですか。
お母様:
1日水分800ml、塩分5gの制限がなくなり、好きなものが好きな味で好きなだけ食べられるようになり、食欲が出てきたことです。おかげで、移植後、一気に身長は11cm伸び(121cm→132cm)、体重が8kg(20kg→28kg)増えました。透析中は身長も伸びず、体重も増えなかったので、どうやったら体重を増やせるかいろいろと悩んでいたのですが、移植後は外来で測るたびに、身長が1cmずつ伸びています。
新しい腎臓が成長に直結するのですね。
寺西先生:
やはり、小児の移植の意義はそこにありますよね。顔色も表情も良くなりましたしね。
お母様:
本当に顔色は以前とは全然違いますね。腹膜透析をしていたころは、顔がいつもむくんで丸かったのですが、今は顔つきもすっきりとしています。
顔色も変わって、むくみもとれて、元の元気な姿に戻ったのですね。
お母様:
それから、走れるようになったことも大きかったです。腹膜透析中はおなかに管と透析液が入っているため、転んでは危険ということで運動制限がありました。
今、学校ではサッカーをやっているのですが、最近、パスを受けてドリブルをし、最後に突破してゴールをしたそうなのです。「体力が相当ついたから、ゴールが素晴らしかったですよ!」と学校の先生が褒めてくれました。
「バレーボールでラリーがすごくつながったのですよ」とか「サッカーでパスがうまくなりましたよ」とか、毎日学校の先生が報告してくれるのですが、そのような話を聞くと、本当に元気になっているなと感じます。学校の先生方も腹膜透析時代から見てくれているので、「当時とは全く違いますね」とおっしゃいます。
茅乃ちゃんはサッカーが好きなの?
茅乃ちゃん:
うん、楽しい。ゴールするのが好き。
寺西先生:
茅乃ちゃんのように腎臓以外に悪いところのないお子さんの場合は、移植をすると、運動機能などは劇的に良くなりますね。
茅乃ちゃんは何をしているのが一番楽しいですか?
茅乃ちゃん:
動くのが好きなので、体育が好き。
寺西先生:
それから、これは今日外来で茅乃ちゃんからもらったのですが、絵もとてもうまくなりましたね。
茅乃ちゃん:
やった!!
お母様:
腹膜透析中は管の出口部からの感染防止のため、シャワーだけしかできなかったので、入浴することができるようになったこと、浴槽に浸かれるようになったこともうれしかったです。
さらに、茅乃の入院を機に、皆が健康に気を付け、そして私が茅乃につきっきりだったので、母親がいない家族が一致団結して、お互いを支え合うようになったのも、家族にとってはうれしいことでした。
夢に向かって
日常の服薬や、血圧、体重等の記録はどのような方法で行っていますか。
お母様:
服薬は朝夕の2回です。お薬の箱を用意してあり、月曜日から日曜日までの1週間分、朝昼晩それぞれセッティングしてあります。私が箱から出して飲ませるのですが、私が忘れていると、自分で出して飲んでいます。薬が足りないと「〇〇が足りない」と言ってくるので、徐々に自分でもできるようになると思います。血圧は、朝と夜寝る前に測定しています。体重は朝起きて、排尿後に測定しています。自分のスケジュール帳を一冊買って、そこに毎日記録をしています。
退院指導で、家庭での管理も指導されるのですか。
寺西先生:
退院の際にパンフレットを渡すのですが、成人では共通のものを渡していますが、お子さんはそれぞれ異なるので、毎回オリジナルのものをその子にあわせて看護師さんが作成して渡しています。
移植後、新たに始めたことや、今後の夢はありますか。
お母様:
娘の夢は看護師になることです。自分が経験した痛い思いや、つらい思いがあるため、患者さんの気持ちも分かるし、必ず治ると信じることを伝えて看護したいと言っています。
茅乃ちゃん:
( 自分はいろいろと経験してきたからこそ)患者さんに元気になってほしいです。
お母様:
娘は小児科の看護師になりたいそうです。
寺西先生:
( 私は泌尿器科なので)ふられちゃいましたね(笑)。
頑張って看護師になってね。
茅乃ちゃん:
はい。