腎移植後の筋力トレーニングはどのくらいの頻度、強度で行えばよいのでしょうか?
2019.10.04
腎移植後半年経ち、腎機能が安定していれば筋力トレーニングもやっていいということを聞いたことがありますが、どのくらいの強度でやっていいのかが分からないため、教えてください。
メディプレス執筆・監修医からの回答
腎移植後半年が過ぎ、退院後の生活にも慣れてきたころでしょうか。
20代で腎移植を受けなければならなかった一方で、スポーツをしていて、がっしりとした体つきだったということは、幼少時から食事制限などのつらい腎臓病の治療を続けてきたわけではないようにお見受けしました。
運動について勧める立場から言いますと、筋トレを適度に行うことは、とてもよいことです。
一般的に、運動としては週3回以上、30分以上の運動で、可能であれば汗をかく程度の有酸素運動を勧めています。
それに加えて、または、それができなくても、負荷のかかった筋肉が疲れたなと思う程度の筋トレを行うのはよいことですが、筋肉は負荷がかかった後、タンパク質とエネルギーを取り入れて回復・増加します。そのため、筋トレをする場合は、筋肉の回復の期間をおいてあげることが必要になります。アスリートを目指すような方でなければ、負荷の後は筋肉に2~3日の休みをあげた方がよいでしょう。ですから、負荷のかかる筋トレを行うのは週3回以下となります。
筋肉が再生していく中で、さまざまな体に良い物質が放出されると同時に、クレアチニンもたくさん出てきますので、検査ではクレアチニン値が上がる傾向にあります。このことは、主治医とともに認識しておくことが必要です。
腎臓に良いか悪いかという点については、クレアチニンの増加と、摂取タンパク量の急激な増加は、腎臓内科医は良い顔をしないかもしれません。ですから、まだ、移植後1年もたっていないころであれば、体の状態と検査結果と相談しつつ、強度をゆっくりあげるのがよいでしょう。
スポーツ医学の知識から言いますと、いったん筋肉が付いた体では、何らかの理由で筋肉が落ちた後にまた筋肉がつくのは、そうでない人よりもつきやすいそうです。ですから、焦らずにゆっくり戻すことを心掛けてほしいと思います。
そして、少し耳の痛いことを言いますと、術前にガリガリな体型になってしまった質問者様は、おそらくその頃は、かなり気力と体力の落ちた生活を強いられていたのではないでしょうか。 そして、移植腎のおかげで体調が回復し、今はとても体調がよく食欲旺盛で、やる気が出ているのではないかと思われます。
これは、副腎皮質ステロイド薬(服用していない方もいらっしゃると思います)の影響もありますので、そのような状況で気持ちに任せて食べてしまうと、たんぱく質を増やした食事と言っていても、結果的にカロリーが必要以上に多くなり、急激な体重増加につながってしまう可能性があります。
どんなに痩せてしまっていても、1カ月に1kg以上体重が増えるのはよくありません。
急激な体重増加が、結果的に高血糖につながったり、塩分が多ければ高血圧と体液過剰(むくみ)につながったりします。
移植後の最初の1年はいろいろなことがあります。薬の内服、血圧や体重の自己管理をまずはしっかりとしていただくことが、腎移植後の新しい人生のよいスタートになります。
そして、生涯にわたって体を支え続けてくれるのが「筋肉」ですので、いたわりつつ鍛え続けてあげましょう。