メッセージ
岩本先生にお伝えしたいことはありますか。
佐藤さん:
先生がいろいろ考えてくださったおかげで、まだ生きていられます。心から感謝しています。
ドナーであるお母様への思いを教えてください。
佐藤さん:
腎臓をひとつ頂いて感謝しています。今までは、「自分の体は自分で管理しなければいけない。自分で責任を持たなければいけない。」と思っていたのですが、今回はそれができない状況に陥り、母が助けてくれました。ですから、それに対しては、恩返しがしたくでもできないくらいの恩を受けたと思っています。私を産んでくれて、なおかつまた、自分の一部分を私に与えてくれたということに関して、本当に心から感謝しています。
奥様から見ても、移植後、ご主人は変わりましたか。
奥様:
家の中ではもともと協力的な人でしたのでそれほど変わりませんが、外に対しては丸くなったかもしれません。移植前はもっと利己主義だったような気がしますね(笑)。
現在、移植手術を控えている、または移植手術を検討しているレシピエントやドナーの方へメッセージをお願いします。
佐藤さん:
おそらくこのインタビューを読まれている方は、腎臓の悪い方が多いと思いますので、あえてここで、「体を大切にしてください」とは言いません。ただ、これから先のことを考え、周りに大切にすべき人がいるのであれば、「移植でも透析でも、ご自身が考える、一番いい選択をしてください」とお伝えしたいですね。どちらを選んでも、当然家族に負担がかかりますから、まずはご家族のことを考えてほしいと思います。私もこの病気になって、「自分のことではなく、まず先に家族のことを考えなければいけない」ということを、とても強く思うようになりました。
最後に、先生からも、透析を経ない腎移植(プリエンプティブ移植)をご存じない方にメッセージをお願いします。
岩本先生:
佐藤さんの場合は、初めに腎臓内科の先生から、透析か移植かという治療の選択肢を提示いただけたと思うのですが、それはある意味で幸運だったと思います。腎機能が悪化しても、全ての施設が治療の選択肢を提示してくれるわけではありません。やはり移植手術を行っていない施設では、「移植という選択肢もありますよ」とはなかなか言いづらいと思います。
プリエンプティブ移植というのは、シャントを作らなくてよかったり、それによって入院期間が短くなることもあり、経済的にも負担が軽く、何よりも、透析関連の合併症である動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞などの心配をせずに移植ができます。当院でも現在、移植手術をされる方の約3割がプリエンプティブ移植なのですが、全国的にも徐々に増えてきている傾向にあります。
そのような現状がありますので、現在腎不全で苦しんでいらっしゃる患者さんや透析を控えている患者さんは、ぜひ一度相談に来ていただき、移植医療を知った上で判断していただければと思います。