MediPress編集部コラム【腎移植後のお金シリーズ】では、腎移植後の生活の中で、移植者のみなさんが現実的に向き合うお金の問題について、わかりやすく解説をしていきます。
第1回目の今回は、成人※のための「医療費助成制度」と「障害年金」について取り上げます。
※当記事内において「成人」とは、18歳以上の方のことを指します。

<協力:東京女子医科大学 八千代医療センター 医療支援室 社会福祉士 ソーシャルワーカー 縄島正之さん>

※以下の文章内に含まれる情報は、2015年3月時点のものです。随時変更される可能性がありますので、最新情報は、各団体の担当窓口までご確認ください。

~腎移植後のお金シリーズ~
第1回 医療費助成制度と障害年金(今回)
第2回 小児のための医療費助成制度
第3回 身体障害者手帳により受けられるサービス①(税金、交通機関)
第4回 身体障害者手帳により受けられるサービス②(公共料金、公共施設)
第5回 腎移植後の民間の医療保険
第6回 腎移植後の民間の生命保険

助成金額は、お住まいの地域と所得によって決まる

医療費助成制度は、お住まいの地域と所得によって対象年齢や助成範囲が異なったり、複数の制度を組み合わせることで自己負担額が変わってきたりします。
ですから、まずは病院のソーシャルワーカーや地域の障害福祉課に相談し、自分にとってベストなものを選ぶようにしましょう。

地域によって異なる費用

移植後の医療費は月に2万円以内がほとんど

2014年11月に「MediPress腎移植」が会員向けに行ったオフィシャルアンケートの結果をご覧ください(回答者:腎移植者140名)。
Q:移植後、定期的に通院する際の、月額の医療費(薬剤費含む)は平均でいくらくらいですか?

アンケート回答

回答者のうち4割の方が、毎月の医療費は0円とのことでした。また、全体のうち95%の方が、毎月の支払いは20,000円に収まっています。
毎日服用する免疫抑制薬などはとても高価な薬ですから、皆さんがお持ちの保険証(国民健康保険や健康保険組合の保険など)だけではここまで安価に抑えることはできません。これが成り立つのは、各種の医療費助成制度が、保険適用後の自己負担額を補填してくれているからなのです。

腎移植者(成人)のための医療費助成制度

成人の場合、健康保険・自立支援医療(更生医療)・重度心身障害者医療費助成制度を組み合わせて利用し、自己負担額を軽減します。

医療費助成制度(成人)

◇身体障害者手帳について

自立支援医療(更生医療)、重度心身障害者医療費助成制度ともに、申請するためには身体障害者手帳が必要です。

透析治療をしていた方のほとんどは、透析中から1級の身体障害者手帳を持っていると思いますが、移植後もそのままその1級の手帳を所持することができます。

透析を経ず、先行的腎移植(プリエンプティブ腎移植)を受ける方は、移植時の医療費助成を受けるためにも、移植前に身体障害者手帳を取得するようにしましょう※。
移植前は、クレアチニンの検査数値によって、1級、3級もしくは4級の手帳を取得することになりますが、移植後は1級となりますので、移植前に3級もしくは4級の手帳を取得していた方は、移植後なるべく早く1級の再認定を受けるようにしましょう。
※移植後に、移植前の日付に遡って身体障害者手帳の申請をすることはできません。

申請フロー

◇自立支援医療(更生医療)

対象となるのは、18歳以上で身体障害者手帳の交付を受けている方です。等級による制限はありません。
この制度によって、移植手術費用だけでなく、移植後に支払う医療費の自己負担額も大きく軽減することができます。

具体的には、健康保険を適用後の医療費の自己負担額に対し、所得額に応じて、1カ月当たりの自己負担上限額が0~20,000円となります。
ですから、この制度を適用すると、腎移植後の定期フォロー通院時など、抗免疫抑制療法に関する治療や投薬であれば、1カ月の自己負担額の上限は最大20,000円となります。

ただし、腎移植後のすべての治療や投薬が適用になるのではなく、「腎機能障害」に対して「免疫抑制薬による抗免疫抑制療法」の治療や投薬を行った際にだけ、この制度が適用されるので、例えば歯医者さんなど、免疫抑制療法と直接関係のない治療に対しては、この制度は使えません。

なお、制度の実施主体はお住まいの市区町村となりますので、詳細は障害福祉課などにお問い合わせいただき、ご自身のケースについてご確認ください。

※参考:厚生労働省HP
◇自立支援医療(更生医療)の概要
◇利用者負担額

◇重度心身障害者医療費助成制度

心身に重度の障害がある方を対象に、医療費の自己負担額を軽減する制度です。都道府県や市町村が実施しており、対象となる障害の程度や助成内容は、自治体によって異なります。対象者が未成年者などの場合には、保護者の方などに医療費が助成されます。
詳しくは、お住まいの市区町村の障害福祉課などにお問合せください。

例)東京都にお住まいの場合
通称「マル障」と呼ばれ、腎臓の内部障害の場合、身体障害者手帳1級または3級の方が対象となり(所得制限基準額を超える方等を除く)、健康保険の自己負担分から一部負担金を差し引いた額を助成します。

マル障


※参考:東京都福祉保健局HP
◇心身障害者医療費助成制度(マル障)


障害年金の受給について

移植前に、透析治療を受けていた方の中には、障害年金の受給を受けている方もおられると思います。障害年金は、障害の程度によって認定される級が異なりますが※、移植を受けることで障害の程度が軽くなると、支給停止もしくは支給額の減額をされることがありますので、留意が必要です。ただし移植後1年間は、術前の等級で判断されますので支給は継続されます。
※障害年金で認定される級は、身体障害者手帳の級とは異なります。

なお、障害年金の受給を継続するためには、毎年誕生月に送付されてくる「現況届」に記入し提出する必要があります。それ以外に、障害の程度を確認する必要がある場合には、2~3年に一度、診断書が付いている「障害状態確認届」が送られてきます。その確認届の提出した内容によって支給の判断が見直されます。

※参考:日本年金機構HP
◇腎疾患の障害の認定基準
◇現況届について
◇電話での年金相談窓口