大切な腎臓のために

薬や体重の管理はどのようにされているのですか。

高橋さん
薬は携帯電話のアラームをセットして、飲み忘れないようにしています。体重は起きてすぐに量り、毎日記録しています。

後藤先生、こちらの病院では、移植腎を長持ちさせるための自己管理法について、特別に何か指導されていますか。

後藤先生
全員にしっかり血圧、体重、尿量を測ってもらっています。そうすることで塩分摂取量などが分かります。ご本人がきちんと管理していると言っても、そうでない場合は分かってしまいますね。
どちらかというと、病院の指示に対してきちんと反応してくれない人に対して指導するのが、本当の指導だと思います。反応してくれる人であれば、ある程度のことはきちんと矯正できるから良いのですが、今まで自分の思い通りに身勝手にやってきたことを全然変えてくれない方を、なんとかしなければならないときがあります。


辻田先生
確かに自己管理ができない人はいらっしゃいます。特に2型糖尿病の人は、もともと自己管理が悪いために腎不全をきたしていますので、指導が難しい場合がありますね。

移植コーディネーターの方も、移植後の自己管理指導をされるのですか。

野畑コーディネーター
移植後は、患者さんのお薬の他、きちんと血圧測定や体重測定ができているかといったことを確認しています。また、移植したのはいいのですが、やはり何か葛藤を抱えていたり、クレアチニンのちょっとした上昇があっても不安になっていたりすることもありますので、そのような点をお聞きして、時々面談も行っています。

移植後、ドナーのお母様に対しては何か特別にイベントなどは行っていますか。

高橋さん
特別なことはしていませんが、きちんと自己管理をして、頂いた腎臓を少しでも長くもたせるようにすることが、母を安心させる一番のことだと思って毎日を過ごしています。

移植後に新たに始めたことや、今後やりたいことはありますか。

高橋さん
病気になってからは家にいる時間が多かったので、手芸を始めていろいろなものを編んでいました。今は子育てが忙しいので全然できていませんが、落ち着いたらまた始めたいと思っています。
あと、子どもがもう少し大きくなったら、家族3人で旅行に行きたいと思っています。


高橋さんの手芸作品

これから移植を受ける方へ

現在、出産を希望して移植手術を控えている、または移植手術を検討している方へお伝えしたいことはありますか。

高橋さん
移植後、いろいろ考えると出産は不安でなかなか決断できませんでしたが、やはりチャレンジする価値があったと思います。先生やサポートしてくれるいろいろな人のことを信じていれば、きっといい結果につながると思います。自分一人で考えていると不安がとても大きくなってしまうと思いますが、先生の指示にきちんと従っていれば、ストレスを溜め込まずに、必要以上に自分を追いこまないようにできると思います。移植して出産を考えていらっしゃる方には、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。

最後に先生方からメッセージをいただけますでしょうか。

辻田先生
私はもともと腎臓内科におりましたが、特に若い方の場合は移植をした方がいいと分かっていましたので、20~40代の患者さんに対しては移植を勧めていました。移植医療の一番の問題は、腎臓内科の医師が自ら勉強をしていないと、自信を持って患者さんに移植を勧められないということだと思います。その点を改善し、腎臓内科医の意識改革をしていくことが、今後、移植医療を十分に発展させることにつながるのではないかと思っています。


後藤先生
女性の腎不全患者さんで妊娠希望がある人に対しては、いつも以上に、長い目で見た治療方針を立ててあげることが必要だと思います。仕事、結婚、移植、出産、子育てをこれから先のどのタイミングで予定するかは、原疾患に応じた治療方針がわからないと決めることができません。若い女性患者さんが後になって後悔しないように、最初に診察するすべての腎臓内科医が、腎移植後妊娠出産に関しての知識も含めて、早い時期にその治療方針をきちんと説明するべきだと思います。若い腎臓内科医は、腎移植をもっと勉強してほしいと思います。

集合写真