透析がいいのか、移植がいいのか
その後の病状はいかがでしたか?
濱崎さん:
小学校高学年になるまでは、特に気になる病状はありませんでした。ただ、怖いぐらいに口渇を訴え、かなりの量を飲水していました。また、夜尿は移植寸前まで毎晩続いていました。
小学校高学年になるにつれて、肌の色は青黒く、悪くなっていきました。また、疲れやすく、ぐったりとすることも増え、次第に食欲が無くなっていきました。
そして、2011年2月、脱水症状になったため検査をしたところ、腎機能数値が急上昇している事が分かりました。総合病院を受診したところ、早ければ年内にも人工透析が必要になると診断されました。
その時は透析治療に関しての知識はお持ちだったのでしょうか?
濱崎さん:
当時は透析の知識はありませんでした。先生からも「人工透析をしているお子さんは多いですよ。人工透析になったからと言って、そんなに落ち込まなくても大丈夫です。学校にも通っていますよ。」と明るく言われたので、私も「そんなに深く考えなくてもいいのかな。」と思っていました。
その頃から、子供達を寝かせてから、インターネットで情報を検索し続ける毎日が続きました。腎臓病の治療に関する情報をくまなく探し、隅から隅まで読みました。朝3時くらいまで読み込んでいた事もあります。
移植に関してはいつ頃知ったのでしょうか?
濱崎さん:
移植に関しては、雄太郎が小学校3,4年生の頃、テレビ番組で、母親から子供への生体腎移植のドキュメンタリー番組が放映されていたのを観て「こんな治療もあるのだな」と頭の片隅には記憶していました。
ただ、インターネットを毎晩のように調べる中で、透析治療も悪くないとの情報もありましたし、病院の先生も移植に積極的という印象では無かったので、「移植はよくないのかな?」とも思っていました。
その後、何故移植手術をしようという気持ちになったのでしょうか?
濱崎さん:
頭の片隅には「移植」という言葉があったのですが、それまでは透析同様、詳しく調べた事はありませんでした。毎晩のようにインターネットで治療法を調べる中で、移植治療に関してもかなりの情報を得る事が出来ました。インターネット上には、『移植後こんなに元気になりました』という情報がたくさん載っていました。素人ながら「雄太郎にとっては移植の方が絶対にいい。」と思うようになりました。
北田先生との出会い
担当医師に移植希望を伝えた時には、どの様な会話がありましたか?
濱崎さん:
先生には2011年3月に私達が移植を希望している事を伝えました。ただ、先生からは「透析でも普通に学校に通えますよ。」と言われ、移植に対してあまり前向きではない印象を受けました。
その為、別の病院の先生に相談をしたところ、その先生は「私は専門医ではないので、何とも言えないが、メリットとデメリットをしっかり聞いた方が良いでしょう。」と言われました。その後別の若い先生からご連絡を頂いたのですが、その先生は「私は移植が1番いい治療法だと思います。」と断言してくださいました。そして北田先生を紹介してくださったのです。
北田先生と初めて移植について話したのはいつ頃ですか?その時の印象はいかがでしたか?
濱崎さん:
2011年5月に、初めて九州大学病院の診察を受けました。とにかく、ドキドキして待っていたのを覚えています。
北田先生は、恐らく私達家族が不安でいっぱいだという事が分かっていらっしゃったのか、私達が緊張しないように、初めから気さくに話をしてくださいました。
「移植をすることで、また、思いっきり野球が出来るようになるし、普通に学校に通う事が出来る。」と話をしてくださいました。私達家族の未来に明るい光が差し込んだ瞬間でした。
同時に、「献腎移植は現在、平均で約15年の待機期間があり、その間透析治療を受けたとしても、様々な合併症に苦しんだり、寿命が短くなる可能性もあるため、雄太郎くんの場合は生体腎移植がベストでしょう。」というお話もされました。
ただし、「ドナーの方の安全が第1優先です。」ということも真面目な顔でお話されました。「ドナーの方の検査をきちんと行い、異常がないことを確認してから、移植の話が進んでいきます。」という事もきちんと説明してくださいました。
北田先生が濱崎さん親子に会った時の印象はいかがでしたか?
北田先生:
濱崎さん親子にお会いした時、この年代のお子さんでこの様な状況であれば、迷う事なく移植した方がいいと思いましたね。
雄太郎くんにとって移植治療という大きな選択肢があるのに、濱崎さんの様に自分たちでインターネットなどで一生懸命調べなければ情報が得られないというのは問題ですよね。
「透析をしている子供もたくさんいますよ。」というのも事実で、いろいろな理由で透析で頑張っている子供さんも数多くおられます。他の治療法が無いのであればやむを得ないことですが、移植という選択肢が医師から出てこないのは残念です。
雄太郎くんは、北田先生に初めて会った時、どんな話をしましたか?
雄太郎くん:
最初先生に会った時、先生に「自分はどんな性格?」と聞かれ「開き直りが早い性格です。」と答えました。先生からは「それはいい性格だね(笑)。」と言われたのを覚えています(笑)。