思い出の映画 『ハリーポッター』
雄太郎くんの手術後の経過はいかがでしたか?
濱崎さん:
雄太郎は、家族みんながびっくりするぐらい、どんどん回復していきました。術後から、食欲旺盛になり、ガツガツ食べていました。麻酔が覚めてからは、DVDをずっと観ていたそうです。痛みは全くなかったそうです。
雄太郎くんは何のDVDを観ていたの?
雄太郎くん:
ハリーポッターの映画を観ていました。
北田先生:
そういう時に観た映画は一生忘れられない映画になるよね。
濱崎さん:
雄太郎は、術後5日目には、私が入院している階が違う病棟まで歩いてきてくれました。これが術後初めての歩行でした。その後も入院中は、移植患者とは思えないほど元気に過ごしていました。
主人や雄太郎の祖母は「雄太郎の目が活き活きとして、術前の顔つきと違うし、顔色も日に日に良くなってツヤツヤしてきた。」と言っていました。
雄太郎は予定通り8月5日に移植手術を受け、8月19日に退院することが出来ました。そして、2学期始めから中学校に登校する事が出来ました。
その後は、術後2ヵ月頃、帯状疱疹が出来て入院した以外は特に問題もなく、学校もほぼ休まずに通う事が出来ています。
帯状疱疹は、おなか周りにびっくりするぐらいできてしまっていたので、移植腎が駄目になってしまうのではと思い慌てて病院に行ったのですが、「免疫抑制剤を服用しているので、帯状疱疹は珍しくないのですよ。」と先生から言われ、ほっとしました。
ドナーであるお母様の術後の経過はいかがでしたか?
濱崎さん:
雄太郎とは違い、私は術後2日~3日間は、朝なのか夜なのか分からないくらいの激痛との闘いでした。こんなに痛みがあるとは思っていませんでした。痛みに対する覚悟は決めていなかったので、余計に痛いと感じたのかもしれません。
ただ、その痛みは嬉しい痛みでもありました。手術前には「手術の途中でも移植ができないこともありえます。」と説明を受けていたので、愛するわが子にきちんと腎臓を渡す事が出来た痛みなのだろうと思うと我慢はできました。
北田先生:
ドナーはレシピエントよりも手術の傷は小さいのですが、傷の位置がレシピエントと違いますからね。同じ大きさの傷でもその部位によって痛みは違うものなんです。
痛みの感じ方は個人差もあるので、ほとんど痛がらない方もいらっしゃいます。手術の翌日から歩いているドナーの方もいらっしゃいますね。
ほとんどの方で術後3日までには大きな痛みはなくなるようですね。
濱崎さん:
雄太郎もこんな痛みを感じているのだろうかと先生にお聞きしたところ、「ものすごく元気でDVDを観て笑っていますよ。」と言われ安心しました。
術後翌日もしくは2日後位に、「集中治療室にいる雄太郎くんに会いに行きませんか?」と先生から言われましたが、動けるような余裕はなかったので、「雄太郎が元気に過ごしているようなので安心です。もう少し痛みがおさまってから会います。」と答えていました。
でも、北田先生のおっしゃるように、術後3日目位からはゆっくりですが歩行も出来るようになり、みるみる回復していきました。
術後、雄太郎くんと初めて交わした会話はどんな内容でしたか?
濱崎さん:
それが、、、術後3日か4日目に雄太郎に会いに行ける状態になったので、看護師さんにお願いして髪も綺麗に洗い、車椅子で雄太郎に会いに行きました。私は感動して涙を浮かべて「雄太郎~!!」と近寄っていったのですが、雄太郎は「ああ」とだけ言ってそのままDVDを観続けていたのです(怒)。
雄太郎くん:
母さんはとても大げさだったし、その頃は動くと少しふらふらしたので仕方がなかったんです。
北田先生:
中学生の男の子であれば、正常な反応ですね(笑)。
濱崎さん:
移植直後はそんな感じでしたが(笑)、普段の生活では色々と私に気を遣ってくれます。